1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
Superbugs Could Kill Millions by 2050. A 100-Year-Old Treatment Could Help

National Institute of Allergy and Infectious Diseases-Unsplash
<2050年までにがんを上回る死因になると言われる薬剤耐性菌・スーパーバグ。抗生物質が効かない菌に打ち勝つ治療法は、100年以上前に既に発見されていた──>
2050年までに、薬剤耐性を持つ「スーパーバグ(超多剤耐性菌)」によって、年間最大1000万人が死亡する可能性がある──世界保健機関(WHO)はそう警告している。20世紀の医学を一変させた「奇跡の薬」抗生物質は、急速にその効力を失いつつある。
そんななか、100年以上前に発見されながら忘れられていた治療法に、再び注目が集まっている。「ファージ療法」と呼ばれるこの手法は、細菌に寄生して内部から破壊する性質を持つウイルス「バクテリオファージ」を使って感染症と闘うというものだ。
かつてペニシリンに埋もれていたこの研究分野は、感染症に対する新たな対抗策を求める動きの中で、再び脚光を浴びている。
科学誌『セル・リポーツ(Cell Reports)』に掲載された新たな研究によると、細菌はウイルスに攻撃された際、驚くべき「生存戦略」を発動することがあるという。
細菌は感染を拡大させる代わりに、ウイルスを細胞内で「隔離」するような領域を形成し、ウイルスを残りの細胞部分から遮断する。この「隔離ゾーン」に閉じ込められたウイルスは、必要な資源を得られず、複製できないまま死滅する。
この現象を明らかにしたのは、メルボルン大学とエルサレム・ヘブライ大学の研究チーム。彼らは遺伝子実験に加え、細胞内を3次元で詳細に観察できる高度なイメージング技術を用いて、細菌がウイルスをどのように封じ込めるかを、ほぼリアルタイムで観察することに成功した。