最新記事
ペット

犬種による能力の違いは幻想? 最新研究が明かす「見た目と実力の関係」

Dog Breeds Not So Different

2025年3月6日(木)13時00分
トム・ハワース(自然・科学担当)

獰猛なピットブルは?

特定の犬種への固定観念についても考えを改める必要があるかもしれない。例えばピットブルのように「身体的特徴ゆえにかむ力が強く、よって危険だ」とのレッテルを貼られがちな犬種もある。

だがこの研究では、同じくらいのサイズの犬種同士で比べた場合、危険度の高い低いにつながるような頭蓋骨の構造の違いは見つからなかった。

「人を襲って深刻な危害を加えた犬のニュースはよく聞くし、この種の報道では特定の犬種が特に多く取り上げられる」と、ウォルドロップは言う。一部の犬種はかむ力が強い、いったんかんだら離さないなどの特徴があり、危険性が特に高いといわれる。

「私たちの研究で、それは事実でないことが分かった。何かをかむようにつくり出された犬種も、体の構造的には他の作業をするようにつくり出された犬と変わりはない」

同様に、においを嗅ぐためにつくり出された犬種の頭蓋骨にも、鋭い嗅覚につながるような特徴は見つからなかった。研究チームは、犬種ごとの能力の違いには、性質の違いが大きく影響しているとみている。

一方でオオカミやキツネなど野生の近縁種の頭蓋骨は、自然の中で生きていくための機能的なニーズに特化したつくりになっていたという。

例えばオオカミの鼻は長く、狩りやにおいの検知に最適化されていた。面白いことに、キツネの頭蓋骨はテリアなど小動物を追う猟犬と非常に共通点が多かったという。

【参考文献】

Hebdon, N., Ortega, A., Orlove, A., Wheeler, N., Pham, M., Nguyen, V., Gladman, J., & Waldrop, L. D. (2025). Dog skull shape challenges assumptions of performance specialization from selective breeding. Science Advances, 11(5), eadq9590. https://doi.org/10.1126/sciadv.adq9590

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税

ワールド

イラン産石油購入者に「二次的制裁」、トランプ氏が警

ワールド

トランプ氏、2日に26年度予算公表=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中