標的の癌細胞だけを免疫システムが狙い撃ち...進化型AIを駆使した「新たな癌治療」とは?

PIERCING CANCER’S INNER SANCTUM

2024年5月1日(水)10時35分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

MSKCCの大腸癌の臨床試験のほかにもここ数カ月でいくつか臨床試験が行われ、一部の早期癌において、新しい免疫療法薬が予想よりはるかに効果があることが実証されている。

また、癌に関連する微小なDNA断片を、従来の手法で確認できる数カ月前や数年前の段階で血中から検出する感度の高い診断テストも開発されている。

FDAは、血液や唾液、尿などの体液から病気の予兆を示す異常物質を検出するリキッド・バイオプシーを承認している。死んだ腫瘍細胞や壊れた腫瘍細胞からも小さなDNA断片を検出でき、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、卵巣癌などの固形腫瘍癌に関して、一部の癌治療の成功や病気の進行をモニターするために利用されている。

ただし循環系の腫瘍のDNA量は腫瘍が縮小するにつれて減少するため、癌のスクリーニングや診断に使うには、感度、信頼性、特異度、いずれも十分ではない。

それでも進行中のいくつかの早期臨床試験では、診断ツールとして有望であることが分かっている。さらに、AIが診断データの解釈に貢献しているケースもある。

免疫療法のアプローチが大半の癌患者にとって有効な選択肢になるのはいつ頃か、そもそも実現するかどうかは、まだ分からない。ディアスは懐疑的で、一部の癌は免疫療法に反応しない可能性が高いと考える。

一方で、ディアスのチームは最近、遺伝子検査を使って、リンチ症候群の患者が癌を発症する直前の状態であることを特定した。そして、治療的な免疫療法の手順を適用したところ、癌の発症自体を予防できることを確認した。

ディアスは自分の臨床試験で免疫療法の効果があった患者の幸運を祝う。「あの気持ちは何回でも味わいたい。本当に素晴らしい」

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米関税の影響、かなりの不確実性が残っている=高田日

ワールド

タイ経済成長率予測、今年1.8%・来年1.7%に下

ワールド

米、半導体設計ソフトとエタンの対中輸出制限を解除

ワールド

オデーサ港に夜間攻撃、子ども2人含む5人負傷=ウク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中