【密着ルポ】オープンAIのサム・アルトマンは、オッペンハイマーに匹敵する超人か? 密着して見えてきた、生成AI最前線に君臨する男の素顔と頭の中

THE REAL SAM ALTMAN

2024年2月2日(金)18時50分
エリザベス・ワイル(ニューヨーク・マガジン誌特集担当ライター)

アルトマンは各国を回ってAIがもたらす人類存続の危機について議論し、IAEA(国際原子力機関)のような監視機関の必要性を訴えながら、終始自分をオッペンハイマーに重ねていた。

昨年の夏から秋にかけ、オープンAIは著作権で保護された作品を勝手にAIの学習データセットに使い、儲けているとの批判にさらされた。作品を許諾なしに使用された作家のマイケル・シェイボンは、集団訴訟を起こした。米連邦取引委員会(FTC)はオープンAIが消費者保護関連の法律に違反している疑いがあるとして、調査を開始した。

そもそも純粋な創造性など存在しないと、アルトマンは反論した。作家もイラストレーターも生成AIと同じで、既存のアイデアを再利用し編集し直しているだけだと述べた。

こうした社会の力関係は、家庭にも反映される。そして力の格差は家族のメンバーを傷つけ、時に爆発を起こす。

アルトマン家も例外ではない。18年に父ジェリーが心臓発作で死亡した際、訃報では「サム、マックス、ジャック(その妻ジュリア)、アニーの父・義父」と紹介された。だが一見したところ、サムの人生に妹アニーは存在しない。

アニーは世界の苦しみに敏感で、6歳になる頃には自殺という単語も知らないのに死を考えていた。名門タフツ大学を7学期で卒業したほどの秀才だが、重度の鬱を患い、生きる望みを芸術活動に託した。

昨年夏、私がハワイのマウイ島にアニーを訪ねると、彼女はビジネス一家で育った繊細で芸術家肌の人間、傷ついているのを家族に分かってもらえない人間特有のそぶりを見せた。長い黒髪を編み、低く、抑えた、熱のこもった声で、父親が死んだときのことを語った。両親は既に離婚、父親は金が必要で働き続けていた。父親が死んでアニーは参ってしまった。身も心も打ち砕かれた。彼女はずっと家族の痛みを吸い取ってきて、もう限界だった。

妹との溝は深まるばかり

サムは妹に経済的援助を申し出ていたが、途中で言うのをやめた。2人が交わしたメールやメッセージを見ればサムの愛情(と優位)は明白だ。サムは妹を励まして自立させたい、妹が不快感を理由に精神科医の指導の下で服用を中止した抗鬱剤の服用を再開させたいと思っている。

父親の死後初めての感謝祭で、兄たちは皆、アニーのポッドキャスト番組に出ることに同意した。アニーが取り上げたかったテーマは心理学でいう「投影」(自分の感情などを他者に転嫁すること)だ。兄たちはフィードバックという概念、特にフィードバックを成功させる秘訣という方向へ話を持っていった。

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