最新記事

医療

避妊は2人の問題──男性用ピルが薬局で買える日

A Promising “Male Pill”

2019年4月17日(水)13時00分
カシュミラ・ガンダー

研究者は避妊医療のさらなる発展を目指している TANYA_JOY/ISTOCKPHOTO

<安全で確実な新しい選択肢を男性用経口避妊薬の開発が進む>

あと10年もすれば、男性用の経口避妊薬(ピル)を薬局で買えるようになるかもしれない。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のロサンゼルス・バイオメディカル研究所とワシントン大学の共同研究チームが3月下旬の内分泌学会で発表した研究によると、精子の生成に大きな影響を与えるホルモンを抑制する男性用ピル「11-beta-MNTDC」の臨床試験が進んでいる。

28日間毎日服用した被験者に副作用はほとんどなく、服用をやめると精子の生成に支障はなくなった。ただし、実際に避妊できるかどうかは、さらなる検証が必要だ。

薬の成分はアンドロゲン(男性ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)双方の特徴を持つ「変性ホルモン」で、睾丸と精子の生成をつかさどるホルモン、すなわち内因性テストステロンとゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)を抑制する。

「2つのホルモンの活動を1つに結び付け、性欲は維持しながら精子の生成を減らすだろう」と、UCLAデービッド・ゲフェン医学部教授のクリスティーナ・ワンは言う。「安全でありながら服用を中止すれば効果もなくなる、ホルモン剤による男性用避妊薬が、10年ほどで実用化されるはずだ」

臨床試験には18~50歳の健康な男性40人が参加した。うち30人が11-beta-MNTDCを服用(14人は200ミリグラム、16人は400ミリグラム)。残り10人は対照実験のコントロールグループとして偽薬を服用した。

40人とも28日間連続で薬を服用した。1日目と28日目に血液を採取されたほか、気分や、実験の開始時と終了時の性的機能などに関する質問に答えた。

注入型や貼り薬も登場?

ワシントン大学医学部教授のステファニー・ペイジは次のように説明する。「11-beta-MNTDCは体内の他の場所ではテストステロンに似た作用をするが、睾丸内では精子の生成を促すだけの十分な濃度に達しない」

研究チームによれば目立った副作用も見られず、被験者全員が所定の量を服用し続けることができた。数人に疲労感や頭痛、にきびがみられたが、深刻な影響はなかった。

性欲減退を経験した人が5人、軽度の勃起障害が2人いたが、いずれもホルモン剤に伴う通常の副作用の範囲だと、研究チームは考えている。

体重の増加は見られた。偽薬のグループが平均0.6キロ、200ミリグラム服用のグループが平均1.3キロ、400ミリグラム服用のグループが平均1.9キロ、それぞれ増えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、OPECに値下げ再度要求 ウクライナ戦

ワールド

米中外相が電話会談、両国関係や台湾巡り協議 新政権

ビジネス

米1月総合PMI、9カ月ぶり低水準 サービス部門の

ワールド

ハマス、イスラエル軍の女性兵士4人を解放へ 人質交
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄道網が次々と「再国有化」されている
  • 4
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 5
    電気ショックの餌食に...作戦拒否のロシア兵をテーザ…
  • 6
    早くも困難に直面...トランプ新大統領が就任初日に果…
  • 7
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 8
    「ホームレスになることが夢だった」日本人男性が、…
  • 9
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 10
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 7
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 8
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 9
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中