最新記事

自然災害

世界の危険な火山ビッグ5──特に危ない国はイタリア

The Most Lethal Volcanoes

2018年8月6日(月)12時07分
アリストス・ジョージャウ

ハワイのキラウエア山は今年5月の噴火以降、活発な活動を続け、溶岩が道路や住宅をなめ尽くしている MARIO TAMA/GETTY IMAGES

<ハワイとグアテマラの火山噴火で改めて印象付けられた火山の破壊力。だが噴火の被害は限定的だと思ったら大間違いだ。人口密集地に近い火山には大惨事のリスクがある>

このところ世界中のメディアがハワイとグアテマラの火山噴火を報道し、火山の恐るべき破壊力を改めて印象付けている。

過去500年間の火山噴火による死者は27万5000人以上。その多くは津波や、噴煙で日照が遮られることによる飢饉など二次災害の犠牲者だ。

ここ数十年は噴火による死者数はそれほど多くない。これは噴火予知や防災体制の強化のおかげというより、幸運によるところが大きい。単純な話、人口密集地の近くで大規模な噴火が起きていないだけだ。

世界には、噴火で多数の死者が出る恐れがある火山がいくつかある。噴火の歴史、噴火のタイプ、人口集中地域への近接性などの要因から予測した、世界で最も危険な5つの火山とは?

mag180806volcanoes-3.jpg

ベズビオ山が再び噴火すれば火砕流で大きな被害が TONY GENTILE-REUTERS

ベズビオ山(イタリア)

紀元79年の大噴火で古代ローマの都市ポンペイを滅亡させた世界屈指の危険な火山ベズビオ。1944年の噴火を最後に休眠中だが、過去数千年間には何度も大規模な噴火を繰り返してきた。高温のガスや岩石の破片が火口から最高時速700キロで流出する火砕流が発生しやすいことも分かっている。

しかも、この山はナポリ近郊に位置し、スミソニアン自然史博物館の火山データによれば、100キロ圏内の人口は600万人を超える。

mag180806volcanoes-2.jpg

今年5月に噴火したムラピ山の麓でマスクを付ける子供たち ANTARA FOTO AGENCY-REUTERS

ムラピ山(インドネシア)

火山国インドネシアでも最も活発に活動を続ける火山の1つ。1548年以降、何らかの形で噴火を繰り返している。人口240万人の古都ジョクジャカルタから25キロほど北に位置し、周辺の人口は2470万人に上る。山腹に点在する村々にも多数の人々が暮らす。

この山の噴火では、火砕流に加え、大量の水に交じって土砂や岩石が高速で流下するラハール(火山泥流)が壊滅的な被害をもたらす恐れがある。

最近では、2010年10月から暮れまで続いた一連の噴火で、少なくとも350人の死者が出て、最大35万人が避難した。

カンピ・フレグレイ(イタリア)

ナポリは位置的には不運な都市だ。東にベズビオ山がそびえ、西には巨大なカルデラ盆地カンピ・フレグレイが広がる。イタリア語で「燃える平野」を意味するこの一帯の地下やナポリ湾の海底には、多数の噴火口があるスーパー火山が眠る。

この超巨大火山は1538年の比較的小規模な噴火以降、沈黙を続けているが、最近になって500年の眠りから目覚める兆候が見えてきた。2016年末には大規模な噴火を引き起こす可能性がある「臨界状態」に近づいているとの論文も発表された。

いつ噴火が起きるかは予測不可能だが、もしも起きれば、1980年に起きたセント・ヘレンズ山(米ワシントン州)の噴火の100倍〜1000倍の大噴火となる可能性がある。

スーパー火山の火口に当たる一帯には100万人が暮らしていて、噴火が起きれば瞬時に命を失う。さらに大量のガスが大気中に放出され、地球を広く覆う雲が形成されて寒冷化が進む可能性もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど

ワールド

リビア軍参謀総長ら搭乗機、墜落前に緊急着陸要請 8

ビジネス

台湾中銀、取引序盤の米ドル売り制限をさらに緩和=ト

ビジネス

政府、25・26年度の成長率見通し上方修正 政策効
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中