最新記事

AI新局面

AIが性差別・人種差別をするのはなぜか? どう防ぐか?

2018年2月15日(木)16時26分
エイプリル・グレーザー

だがそうしたデータは古いものが多く、作成当時の固定観念や偏見が含まれている可能性がある。今は無料で利用できる古い公開データには、ある意味でアメリカの人種差別や性差別の歴史が反映されているとも言える。漏洩または公開された犯罪捜査の文書は、それ自体が物議を醸す内容であるケースが多い。

AIの製作チームはソフトウエアに学習させるデータが必要であり、そのため合法的に利用できるデータは何でも使おうとする傾向が目に付く。たとえ、そのデータが理想的なものではない場合でも、だ。

この事態を回避するにはどうすればいいか。改善策の1つはAIシステムを構築する際、「著作権あり」のデータをきちんとした手続きを踏んで利用する行為は「フェアユース(公正な利用)」に当たり、著作権法に反しないと明確にすることだろう。レベンドウスキによれば、AI学習データの著作権をめぐる対立が法廷に持ち込まれたことはまだない。裁判所がはっきりした法的判断を下すまで、AI製作者は利用しやすく、法的な問題がなく、多くの偏見を含んだデータセットを使い続ける可能性が高いという。

データがAIの学習に使われるようになった今、私たちが心配すべきなのは情報の透明性や説明責任だけではない。AIと共に築く未来が過去の不正や過ちを決して繰り返さないよう、手立てを講じる必要がある。


170220cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版2月14日発売号(2018年2月20日号)は「AI新局面」特集。人類から仕事を奪うと恐れられてきた人工知能が創り出す新たな可能性と、それでも残る「暴走」の恐怖を取り上げた。この記事は特集より>

【参考記事】「AIが人間の仕事を奪う」は嘘だった

【お知らせ】
ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮情勢から英国ロイヤルファミリーの話題まで
世界の動きをウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サウジ、産油政策転換示唆 「原油安の長期化に対応可

ワールド

米長官、印・パキスタンに緊張緩和要請 カシミール襲

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株の底堅さ好感 大手ハ

ワールド

一部の関税合意は数週間以内、中国とは協議していない
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中