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ピーチパインを軸にした「理想の循環」実現に大きく前進...西表島ホテルが進めるエコツーリズム

2025年10月24日(金)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

島全体でパートナーシップ「エコツーリズムサイクル」の構築を目指す

これらの取り組みにおいて、同ホテルが最も大切にしているのは「ホテル単体ではなく、島全体でのパートナーシップを通してエコツーリズムサイクルを創り上げること」だ。

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環パインプロジェクトが取り組むのは、地域全体での循環型サイクルの構築だ

「西表島は、様々なステークホルダーが関わりあうことで成り立っている島であり、島の本当の価値を伝えるには特産品の生産者をはじめとする地域の人々と、宿泊客が直接繋がる必要があります。そのため、それぞれの取り組みを実施するにあたっては、地域の人々と宿泊客を繋げる工夫をしています」と、西表島ホテル by 星野リゾート 総支配人の細川正孝氏は語る。

なかでも現在、理想の実現に向けて着実な進展を見せているのが「環パイン プロジェクト」だ。昨年4月の本格始動の後、生ごみの堆肥化を進めて野菜畑などでの試験的な使用を行い、11月には完熟堆肥が完成して実際に島のパイン畑への散布を開始。ホテルのスタッフも農家と一緒に苗の植え付けに参加した。

生ごみを削減するだけでなく、実際に地域で活用できる「資源」を生み出す段階に進化するという大きな一歩を踏み出した形だ。来年にはついに「環パイン プロジェクト」によるピーチパインを収穫し、ホテルの「春のピーチパイン祭り」で宿泊客に提供されるという理想的な循環が完成することになる。

この過程で重要となったのは、島の米農家との協力だった。生ごみを良質な堆肥に変えるには精米の過程で生まれるもみ殻や米ぬかが必要となるが、これまで島内で生産される米の多くが島外に出荷されており、もみ殻や米ぬかが入手できなことが資源循環サイクル構築の障害となっていた。

そこで西表島ホテル by 星野リゾートは西表産米の「地産地消」を地域と一体となって推進するため、ホテルの社員食堂とレストランで西表産米の提供を開始。宿泊者は質の高い地元の米を楽しむことができ、ホテルは顧客満足度を上げることができ、農家は資源循環サイクルの確立によって持続性が高まる。こうしてホテルと地域が一体となり、観光客も地域の人々も恩恵を享受できる持続可能な循環モデルの構築に貢献しているのだ。

自治体や旅行会社を中心にエコツーリズムに取り組む事例は日本各地で見られるが、宿泊事業者主体としての取り組みは西表島ホテル by 星野リゾートが先駆的な事例といえる。地道に取り組んできた結果として本格的に実を結びつつあるこのプロジェクトは今後、ひとつの成功モデルとしてますます注目を集めることになりそうだ。

◇ ◇ ◇

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