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パンや土、ワイン、コンクリートからも...地球上のあらゆるものが電力源に? 発電の先を行く「超小集電」の可能性

Electricity from Bread?

2025年3月28日(金)16時00分
酒井理恵(ライター)

中川はデザインやセンシング技術の専門家だ。ユニバーサルデザインを追求する過程で「エネルギーも多様であるべき」との考えにたどり着いた。

現在、世界では約8億人が夜間の学習や就労、医療の提供が制限される「未電化地域」で生活しているとされる。日本でも災害発生時に送電網から電力が供給されなくなる可能性があり、対岸の火事ではない。


多様な活用法に期待

超小集電のキーワードは「自給自足」。その土地に存在するあらゆる自然物を利用できるため、「いざというときの生命維持装置」として実用化への期待が高まる。

挑戦の第一歩である茨城県常陸太田市の「KU-AN/空庵」は、木製の超小集電装置1500個に詰めた土壌を介し、800個のLEDが点灯する実験施設だ。2021年7月の開設以来、のどかな山間に浮かぶ優しい明かりは、送電網から独立してともり続けているという。


このほかIoT技術との連携により、活用の幅はさらに広がるだろう。例えば、農作物に被害を与える鳥獣の捕獲、空き家や文化財のセキュリティー対策での活用を目指し、現在研究が進められている。

超小集電装置で集めた電気をセンサーに送り、動物が罠にかかったり、侵入者を検知したりした場合、スマートフォンへ通知する仕組みだ。IoT技術によって電気の通っていない場所でのセンシングを可能にすることで、担い手の負担軽減に大きく貢献する。

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