最新記事
SDGs

日本初の「中小企業向け、全国的なSDGs認証制度」スタート...認証の効果はこんなにも大きい

2024年7月23日(火)06時55分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)
SDGs ESG

3rdtimeluckystudio-shutterstock

<一般社団法人の日本サステナブルビジネス機構が「サステナブルビジネス認証制度」を創設し、日本企業のSDGs支援に乗り出した。企業側にとって、認証を得ることにはどのようなメリットがあるのか>

6月末、まったく新しいSDGs(持続可能な開発目標)認証制度が発表された。日本サステナブルビジネス機構(以下、JSBO)が開始する「サステナブルビジネス認証制度」で、中小企業を念頭に置いた全国的なSDGs認証としては日本初だという。

JSBOは「SDGs対応戦略の加速と産業界の活性化」を目指し、3月に設立された一般社団法人だ。日本のSDGs研究の第一人者である蟹江憲史氏(慶應義塾大学大学院・メディア研究科教授、xSDG・ラボ代表)が理事長を務める。

JALの小川宣子ESG推進部長や、シブサワ・アンド・カンパニーの澁澤健代表取締役、サステナビリティ・プロデューサーの川廷昌弘氏といった、SDGsの有識者が多数参画。内閣府、環境省、中小企業庁、SDGs認証に意欲的な自治体の担当者らも協力し、昨年から産官学で研究と制度設計を進めてきた。

これだけのメンバーが集まって、なぜ「認証制度」なのか。そして「中小企業を念頭に」とは、一体どのような意味を持つのか。

その理由を探ると、2つのポイントが浮かび上がった。

SDGs推進に苦戦する中小企業にとっての「解を導く」

1つは、大企業を中心にSDGsの達成に向けた取り組みが広がるなかで、多くの中堅・中小企業はいまだSDGs推進に難しさを感じていること。

JSBOの理事で、SDGsのコンサルティングを行うMSSの代表取締役社長、松田孝裕氏によれば、環境や人権に配慮しない企業は企業価値を高められなくなってきているが、中堅・中小企業はどうしても本業の売り上げ・利益に視点が行きがちだという。

「日本の企業は今、原料高や人件費高騰で余裕もなくなってきている。経済と社会・環境のバランスが取れた成長を求められても、中堅・中小企業には難しい課題です」と、松田氏は言う。「サステナブルビジネス認証のようなガイドラインがあれば、どうすればその両立が可能かの解を導くことができます」

サステナブルビジネス認証制度では、25の項目でチェックし、企業の取り組みがどのレベルにあるかを3段階で評価・認証する。だが、認証による「お墨付き」をもらって終わりになっては意味がない。JSBOの狙いは、企業に認証を資金調達や人材確保に役立ててもらいつつ、SDGsの取り組みをさらに促進してもらうことだ。

では、認証が具体的にどう役立つのか。

認証には「包括的にSDGsに取り組む出発点」の役割も

国内外でNPOマネジメントに長く携わり、評価・認証制度にも詳しいブルー・マーブル・ジャパン代表取締役・一般財団法人CSOネットワーク常務理事の今田克司氏は、認証の役割についてこう説明する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナへのトマホーク供与検討「して

ワールド

トランプ氏、エヌビディアのAI最先端半導体「他国に

ビジネス

バークシャー、手元資金が過去最高 12四半期連続で

ビジネス

米、高金利で住宅不況も FRBは利下げ加速を=財務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中