筋力はなぜパワーを必要としないのか?...動きを変える「機能的スピード」の正体
スピードのトレーニングマニュアルを読むと、この考え方に偏りすぎているものがある─指でコインを弾いてそれをつかむ、他のアスリートが落とした物差しをつかむといった「隠し芸」めいたドリルを推奨してくるからだ。
残念ながら、この種の「純粋なスピード」はあまり使い物にならない。我々は、体を全体的に動かしながら進化してきた。そして、四肢のどれか、または体の一部分を速く動かす必要性に迫られるときは、例外的な状況が多い。
だから、わたしが興味を持つのも「純粋なスピード」ではなく「機能的スピード」だ。それは全身を可能な限りすばやく動かす能力を指す。
これは、体全体を光速で動かせるようになるためのマニュアルだ。現実の世界では──スポーツをやるときとか、サバイバル状況にあるときなど──体の一部分だけを速く動かせても十分ではない。想像してほしい。
・障害物を飛び越える ・近寄ってくる敵からすばやく身をかわす ・兵士が射線(弾丸が飛んでくるアングル)を避けるためにダイビングする ・危機から脱するためにすばやく壁を乗り越える ・空中で体をひねり、安全に着地する
これらが、運動時や危急時に必要となるスピードだ。どのシチュエーションにおいても体全体が動作している。このマニュアルを、体全体をできるだけ速く動かすドリルで構成したのもそのためだ。
ここでわたしが「スピード」と言うとき、その「スピード」が「パワー」とオーバーラップしていることをわかってもらえるだろうか? 体には質量があるため、それをすばやく動かすときにはパワーが求められる。
ポール・ウェイド(PAUL "COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。
『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編 爆発的な強さを手に入れる無敵の自重筋トレ』
ポール・ウェイド [著]/山田 雅久 [訳]
CEメディアハウス[刊]
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