最新記事
秋雨

「秋雨が降ると気分が落ち込むのはなぜ?」医師が教える季節メンタルの整え方

2025年10月31日(金)18時01分
池井佑丞(産業医)*PRESIDENT Onlineからの転載

特定の季節にうつ症状が出現する「季節性うつ病」

秋から冬にかけて、毎年同じ時期に「気分が沈む」「やる気が出ない」といった不調を繰り返す場合、季節性うつ病(Seasonal Affective Disorder:SAD)に該当する可能性があります。SADは、特定の季節にうつ症状が出現し、一定の時期になると改善するという特徴を持つ気分障害です(Melrose, 2015)。

典型的なのは寒くなってくる時期に発症し、春先から夏にかけて回復するパターンです。発症の背景には、日照時間の減少による概日リズムの乱れ、セロトニンやメラトニンといった神経伝達物質の調節異常、遺伝的要因などが複雑に関与すると考えられています(Roecklein and Rohan, 2005)。


疫学的調査によれば、反復性うつ病患者の10〜20%程度が季節性の経過を示すとされています(Roecklein and Rohan, 2005)。また、SADの有病率は地域差が大きく、北欧など高緯度地域では約3〜10%と比較的高い一方、日本国内の調査では約0.4%にとどまるとの報告もあります(Magnusson, 2000;Imai et al., 2003)。

一方で、国内で行われた別の研究では、日照時間の短い時期に気分が落ち込む人が増加し、とくに、緯度が高く日照時間の短い地域では、緯度の低い地域よりもその割合が約3~5%ほど多い傾向にあったことが示されました(白川ら、1993)。

これらのことから、診断基準を満たす「SAD」までは至らなくとも、秋から冬にかけて気分の落ち込みや活力の低下といった"季節性の気分変動"を経験する人は少なくないと考えられます。

こうした視点を持つことは、季節の変わり目に生じる「気分の波」を軽視せず、早めのセルフケアや周囲のサポートにつなげていくうえで重要です。

日常習慣を整えることが大切

これまで述べてきたように、秋の気候変化は自律神経やセロトニン機能に影響を与え、気分の落ち込みや集中力の低下を招きやすくする可能性があります。ですが、難しい対策や特別な方法が必要なわけではありません。まずは、日常生活の習慣を整えることが大切です。具体的には、次のような行動がおすすめです。

1.朝の通勤時に10分以上、自然光を浴びる

朝の太陽光は体内時計をリセットし、自律神経やホルモンのリズムを整えることが知られています(Buijs et al., 2003;Moeller et al., 2022)。また、前述のとおり、日光はセロトニン合成を促すため、日中の気分を安定させる効果も期待できます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

諮問会議にハーバード大教授ら参加、日本の財政政策に

ワールド

ノルウェー中銀、金利4.0%に据え置き 年内の利上

ワールド

韓国、国債買い戻し実施へ 燃料減税も拡大

ワールド

ウクライナ向け兵器の中東紛争への転用、米国防総省が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 2
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 8
    地上侵攻もありえる...イラン戦争が今後たどり得る「…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 9
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中