日本の高齢者が握る2000兆円──消費されぬまま毎年50兆円が相続に流れる現実
高齢者の消費が日本経済に役立つ
高齢者が消費に少し力を入れると何が変わるかを考えてみます。
個人の生活では、退職後の資産はできるだけ使わないようにしたいと思う人が多いのですが、もし高齢者がもう少し消費をすれば、かなり日本経済に役立つはずです。
これからの日本は、高齢化率(65歳以上の人口比率)が上昇し続けていきますが、10年前までの高齢化の進展とは大きく様相が変わっています。以前は高齢者の増加に伴う高齢化率の上昇でしたが、2011年以降は人口が減少することで高齢者の増加が止まっているにもかかわらず高齢化率が上昇しています。
これからの高齢化は、その本質が人口減少に変わってきて、「誰が内需を支えるか」という問題がクローズアップされます。
65歳であっても十分に活動的な高齢者は多く、その消費に対する意欲は潜在的には高いはずです。それを「資産が減るのが怖い」ということで消費を控える形になれば、日本経済には決していい結果をもたらしません。われわれ高齢層のマインドセットを消費に前向きに変えていけるかどうかが大きなポイントになると思います。
国民の金融資産3200兆円強の6割を保有
国民経済計算によると2022年の個人が保有する金融資産、非金融資産、土地は合計で3200兆円強に達しています。また全国消費実態調査のデータを使って60歳以上の金融資産と土地の保有比率を推計すると、それぞれ約6割になります。すなわち60代以上が保有する資産の総額は2000兆円の規模になると推計されるのです。
そのうち5兆円程度が消費に回ることになれば、消費の乗数効果も合わせて約600兆円の名目GDPを1%程度引き上げる力を持っています。
5兆円は後述する推計相続市場50兆円の1割、高齢層が保有する資産2000兆円のわずか0.25%にしかすぎません。過剰な消費というほどの水準ではないのですが、その力は極めて大きいことがわかります。
ちなみに、高齢層の消費の実力を数値でみてみます。60代以上の消費が全体の消費に占める割合は、42.2%と既にかなり大きくなっています。しかし、人口構成比は41.8%ですから、高齢層の消費はほぼ人口構成比と変わらないことになります。
ただこれも60代の消費構成比が高いことが影響していますので、70歳以上とすると消費構成は人口構成比を大きく下回ります。60代後半から70代が消費に前向きになれば、日本経済にもっと貢献できるのではないでしょうか。