最新記事
資産運用

日本の高齢者が握る2000兆円──消費されぬまま毎年50兆円が相続に流れる現実

2025年8月15日(金)10時04分
野尻哲史(フィンウェル研究所代表)*PRESIDENT Onlineからの転載

高齢者の消費が日本経済に役立つ

高齢者が消費に少し力を入れると何が変わるかを考えてみます。

個人の生活では、退職後の資産はできるだけ使わないようにしたいと思う人が多いのですが、もし高齢者がもう少し消費をすれば、かなり日本経済に役立つはずです。


これからの日本は、高齢化率(65歳以上の人口比率)が上昇し続けていきますが、10年前までの高齢化の進展とは大きく様相が変わっています。以前は高齢者の増加に伴う高齢化率の上昇でしたが、2011年以降は人口が減少することで高齢者の増加が止まっているにもかかわらず高齢化率が上昇しています。

これからの高齢化は、その本質が人口減少に変わってきて、「誰が内需を支えるか」という問題がクローズアップされます。

65歳であっても十分に活動的な高齢者は多く、その消費に対する意欲は潜在的には高いはずです。それを「資産が減るのが怖い」ということで消費を控える形になれば、日本経済には決していい結果をもたらしません。われわれ高齢層のマインドセットを消費に前向きに変えていけるかどうかが大きなポイントになると思います。

国民の金融資産3200兆円強の6割を保有

国民経済計算によると2022年の個人が保有する金融資産、非金融資産、土地は合計で3200兆円強に達しています。また全国消費実態調査のデータを使って60歳以上の金融資産と土地の保有比率を推計すると、それぞれ約6割になります。すなわち60代以上が保有する資産の総額は2000兆円の規模になると推計されるのです。

出典=『100歳まで残す資産「使い切り」実践法』(日本経済新聞出版)

出典=『100歳まで残す資産「使い切り」実践法』(日本経済新聞出版)

そのうち5兆円程度が消費に回ることになれば、消費の乗数効果も合わせて約600兆円の名目GDPを1%程度引き上げる力を持っています。

5兆円は後述する推計相続市場50兆円の1割、高齢層が保有する資産2000兆円のわずか0.25%にしかすぎません。過剰な消費というほどの水準ではないのですが、その力は極めて大きいことがわかります。

ちなみに、高齢層の消費の実力を数値でみてみます。60代以上の消費が全体の消費に占める割合は、42.2%と既にかなり大きくなっています。しかし、人口構成比は41.8%ですから、高齢層の消費はほぼ人口構成比と変わらないことになります。

出典=『100歳まで残す資産「使い切り」実践法』(日本経済新聞出版)

出典=『100歳まで残す資産「使い切り」実践法』(日本経済新聞出版)

ただこれも60代の消費構成比が高いことが影響していますので、70歳以上とすると消費構成は人口構成比を大きく下回ります。60代後半から70代が消費に前向きになれば、日本経済にもっと貢献できるのではないでしょうか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米地裁、FRB議長の召喚状差し止めの判断維持 検察

ワールド

イラン上空で米戦闘機撃墜、乗員1人を救助 対イラン

ビジネス

米3月雇用者数17.8万人増、過去15カ月で最多 

ワールド

米政権、「脱獄不能」アルカトラズ監獄再開へ予算 ア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 8
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 9
    60年前に根絶した「肉食バエ」が再びアメリカに迫る.…
  • 10
    『ナイト・エージェント』主演ガブリエル・バッソが…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中