日本の高齢者が握る2000兆円──消費されぬまま毎年50兆円が相続に流れる現実

William Potter -shutterstock-
<相続人の半数以上が60歳以上という「老老相続」が進み、資産は高齢層の中で滞留。結果として経済の活性化を妨げる要因にも>
老後はどのようにお金を使っていくのがいいのか。フィンウェル研究所所長の野尻哲史さんは「保有資産のピークは退職時点となるのが本来の姿だ。だが、日本では高齢者がお金を使わず、貯めたお金は高齢者になった子供に相続する『老老相続』まで起きている」という――。
※本稿は、野尻哲史『100歳まで残す 資産「使い切り」実践法』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。
新NISAで資産形成した後はどうすればいいのか
「貯蓄から投資へ」とか、「貯蓄から資産形成へ」といった最近のキャッチフレーズをいろいろなところで見聞きするようになってきました。
NISA(少額投資非課税制度)は2024年1月から制度が大幅に拡充されて一気に人気が出てきましたし、企業型DC(確定拠出年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)も加入者が増えるなか、拠出額の引き上げも期待されています。
これらの非課税制度は"投資を促す"というよりも、若年層が勤労収入のなかから有価証券に少しずつ"資金を積み立てていく"という姿勢を重視していますから、多くの若年層が資産形成、資産運用に関心を持つようになったのでしょう。大変喜ばしいことです。
こうしたときだからこそあえて考えて欲しいのが、「資産形成の後、その資産はどうするのか?」という点です。読者の皆さんはどう考え、どう答えるでしょうか。
退職後の生活のための資産であれば、退職したらその資金は使ってこそ意味があります。まだまだ先のことだと考えている人も含めて、改めてしっかり考えて欲しいのが出来上がった資産をどう使うかの計画です。何のために資産を作り上げるのかを改めて考えて欲しいと思っています。
現役時代は「貯蓄から資産形成へ」ですが、退職したら「資産形成から消費へ」を心掛けたいものです。