日本の高齢者が握る2000兆円──消費されぬまま毎年50兆円が相続に流れる現実
相続人の半数が60歳以上の「老老相続」
しかし、令和6年度「経済財政白書」のなかでも、「65歳以降は年齢が上がっても資産の取り崩しがほとんど進まない」「高齢者は公的年金や勤労等によって得られるフローの所得の範囲内でほとんどの消費活動を賄っており、老後の生活のために蓄積した資産を切り崩す程度は非常に限定的である」と指摘しています。
その結果、起きているのが相続市場の拡大です。
国税庁が発表している相続の市場規模(相続課税価格の総額)は、毎年増加して、2022年には20.7兆円と、ついに20兆円の大台に乗せ、続く23年には21.6兆円に拡大しています。ただ、この数字は国税庁が相続課税の対象になった資産額を集計したもので、相続控除額以下の相続に関してはここに含まれません。
すべてを含めると50兆円にも達するという推計もあります。
日本の名目GDPが600兆円といわれるなかで、毎年その8%強の規模になる相続が行われているのです。
しかも、その大半が老老相続です。前述の「経済財政白書」によると、亡くなった被相続人の年齢構成では80歳以上が1989年に4割弱だったのですが、2019年には72%にまで高まっています。一方、相続を受け取る相続人の年齢構成では2022年に60歳以上が52.1%と過半数を超えています。