最新記事
BOOKS

「自分が正しいと思いたいのは、あなたの自惚れでは?」...反論できないニーチェの指摘【3分だけ哲学】

2025年5月12日(月)16時30分
富増章成

「神は死んだ」とはどういうことか

さて、全体をまとめるとこうなります。人間は、よりパワーアップしたいという「力への意志」をもっている。だから、すべては「力への意志」の解釈だから、真実は存在しない(ニヒリズム)。イデアや神は、弱者が強者に勝つために捏造したものだから存在しない。となると、最高の価値としての「神」はない。だから「神は死んだ」......。

というわけで、ニーチェによると、人類は最高の目的である神を失ってしまったので、「なんのために?」という生きる目的も失っている状態です。このあと、ニーチェはニヒリズムと対峙して、これを克服しようとしていきました(超人、永遠回帰など)。


富増章成(とます・あきなり)

河合塾やその他大手予備校で「日本史」「倫理」「現代社会」などを担当。中央大学文学部哲学科卒業後、上智大学神学部に学ぶ。歴史をはじめ、哲学や宗教などのわかりにくい部分を読者の実感に寄り添った、身近な視点で解きほぐすことで定評がある。

著書に『超訳 哲学者図鑑』(かんき出版)、『読破できない難解な本がわかる本』(ダイヤモンド社)、『図解でわかる! ニーチェの考え方』『図解 世界一わかりやすい キリスト教』『誰でも簡単に幸せを感じる方法はアランの「幸福論」に書いてあった』(以上、KADOKAWA)、『日本史《伝説》になった100人』(王様文庫/三笠書房)、『オッサンになる人、ならない人』(PHP研究所)、『哲学の小径―世界は謎に満ちている! 』(講談社)、『空想哲学読本』(宝島社文庫)など多数。

この世界を生きる哲学大全の書影
『この世界を生きる哲学大全』
富増章成[著]
CEメディアハウス[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

ニューズウィーク日本版 2029年 火星の旅
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月20日号(5月13日発売)は「2029年 火星の旅」特集。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英インフレ上振れも、想定より金利高く維持する可能性

ビジネス

ソフトバンクG、1―3月期純利益5171億円 通期

ビジネス

独ZEW景気期待指数、5月はプラス転換 予想も上回

ビジネス

ホンダ社長、日産との統合協議再開「当分もうない」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 7
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 8
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 9
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中