最新記事
食文化

日本の伝統的酒造りがベルギーの心をつかむ! ユネスコ無形文化遺産がつなぐ醸造文化の共通点とは?

2025年3月28日(金)18時08分
文:Pen編集部

newsweekjp20250328080020-1277950ea628d257f0274098a073b5c219224ca8.jpg

「ベルギーほど多種多様なビールが造られている国はない」と語ったベルギービール協会CEOのクリシャン・マウドガル。

こうした背景によって生まれたビールはその土地に根付き、人々に社会的な繋がりをもたらした。「つまりベルギービールそのものがユネスコ無形文化遺産に登録されたのではなく、多様性によって育まれた文化が重要である」ことをマウドガルは強調した。

また今日のベルギーでは、ビールや醸造に関する博物館や学ぶ場所がたくさんあり、多くのフェスティバルやイベントも開催されている。「私が特に注目したいのは、毎年9月に開催されているベルギービールウィークエンド」と同イベントの内容を紹介した。

4タイプに分類し、多種多様な日本酒があることをアピール

基調講演の後には小西とマウドガルに、西田と酒サムライであり元ユネスコ日本政府代表部特命全権大使である門司健次郎が加わり、参加者とともに利き酒体験が行われた。これは香りの強弱と味わいの濃淡によって、香りが高く華やかな薫酒、軽快な味わいの爽酒、しっかりしたコクのある醇酒、香りも味わいも深い熟酒の4タイプにわけて試飲してもらい、日本酒の多様性を飲み方とともに知ってもらうのが狙いだ。

newsweekjp20250328075803-fc99fde40ff29895ee3c10ab2796a6ae0e201102.jpg

日本酒の海外普及に尽力してきた元ユネスコ日本政府代表部特命全権大使の門司健次郎。ベルギー赴任時にはあらゆるベルギービールを経験した。

newsweekjp20250328075458-66ed9faa90d7455dfd9211611f828c6859e942a0.jpg

日本酒の4タイプ分類に準じて行われた利き酒体験。米の旨味がある純米酒だけでなく、さまざまな味わいがあることを知ってもらうのが狙いだ。

newsweekjp20250328075412-a4654647c78145c2290f9d468396ae1c2eccaddc.jpg

この利き酒体験の中では、米の表層部分を削って残った米の割合をパーセンテージで示した精米歩合や、乳酸を添加せず一から乳酸菌を育てる昔ながらの製法である生酛造りの説明を行うとともに、タイプによって適した温度帯が異なることなど、日本酒の味わい方を参加者に伝えた。

newsweekjp20250328073513-b6d5b523dda026bf72c67f6e5caa98806e452e0e.jpg

参加者全員に4種類の日本酒が提供され、薫酒、爽酒、醇酒、熟酒という4つのカテゴリーによる味わいの違いを体験した。

続いて行われたパネルディスカッションでは、『日本酒の造り』、『風俗慣習とつながり』、『多様な楽しみ方』という3つのテーマについて議論を展開。『日本酒の造り』では、門司が日本酒とベルギービールの共通点である自然発酵について、発酵の過程や環境が異なることを解説した。

『風俗慣習とつながり』では、日本酒は神事や祭事に使われることが多い点に触れ、西田は「米は日本人が毎日のように食べている神聖なもので、日本酒は他者とのコミュニケーションを介在してくれる。だから慣習や文化の一部になっている」と説明。

マウドガルは「ビールも祭りの中心にあり、日常生活の一部。ユネスコ無形文化遺産に登録されているバンシュのカーニバルではビールが中心的な役割を担っている」と共通点を指摘した。

newsweekjp20250328073452-5a5891a2d7838f31fee90c99f70e21e166c7efcc.jpg

パネルディスカッションの最後には質疑応答の機会が設けられ、日本酒に関する具体的な質問が飛び交った。

最後の『多様な楽しみ方』では、小西が日本から持ってきた盃を披露。この小さな器で酒を飲むと、ほとんどの酒が舌の上にとどまり、舌の上で味わう楽しみ方があることを話した。

一方のベルギービールにも種類に応じた専用グラスがあり、「幅の広いグラスだと、ビールのアロマをより強く感じることができる」とマウドガルが補足した。

newsweekjp20250328073350-7051a0c19058a9341036d04f16085ec3adda2525.jpg

盃などの酒器も紹介。容量が少ないのは、喉を通る前に舌の上で味わうためであると小西は説明した。

最後に、西田から日本酒の楽しみ方について質問された門司は「日本酒は世界中の多くの料理との相性がよい。特にフランス料理は、以前よりもバターやクリームの使用量が減り、野菜もフレッシュな状態で使うことが増えたので、日本酒とも合う。和食だけではなく、さまざまな料理と合わせてほしい」と締めくくった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相が訪米延期、確認事項発生 早ければ来週視

ビジネス

エヌビディア、売上高見通しが予想上回る 中国巡る不

ワールド

攻撃受けたイラン核施設で解体作業、活動隠滅の可能性

ワールド

独仏ポーランド首脳がモルドバ訪問、議会選控え親EU
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に侵入してきたクマが見せた「目を疑う行動」にネット戦慄
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 7
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中