最新記事
BOOKS

便秘が「大腸がんリスク」であるとは、実は証明されていなかった...もっと心配すべき「フレイル」とは何か?【最新研究】

2025年2月11日(火)09時00分
内藤裕二(京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授)
大腸

Peakstock-shutterstock

<たかが便秘、されど便秘である理由について、腸内研究の第一人者である内藤裕二・京都府立医科大学教授が解説>

脳、がん、肥満、メタボ、長寿、免疫、老化、便秘...。すべては腸内細菌に関係があった。

腸内研究の第一人者である内藤裕二・京都府立医科大学教授による話題書健康の土台をつくる 腸内細菌の科学(日経BP)より第8章「便秘と大腸がん腸内細菌との関係は」を一部編集・抜粋。


 
◇ ◇ ◇

便秘が大腸がんの発症リスクになると考えている人は多いのではないでしょうか。しかし、現時点では便秘と大腸がんのリスクに明確な関連は見つかっていないのです。

便秘と大腸がんリスクの関係を示す報告がいくつかあるにはあるのですが、少なくとも国立がん研究センターが実施した多目的コホート(JPHC Study)では「排便回数と大腸がんに関係はない」と結論付けられています。

また、2013年に英国の研究者らが発表した複数の研究を統合解析したメタアナリシス[*1]でも、便秘と大腸がんの関連を決定づけるようなものはないと報告されています。

現時点でいえるのは、慢性便秘を抱えている人はそうでない人と比べて10年後、15年後の生存率が有意に低いこと[*2]。また、慢性腎臓病(CKD)や急性心筋梗塞などの病気を発症するリスクや、パーキンソン病などの神経変性疾患のリスクが高いこともわかってきました。

東北大学が、宮城県大崎保健所管内の国保加入者を対象に行った観察研究「大崎国民健康保険コホート(大崎国保コホート)」からは、排便頻度が少ない人は、1日1回排便がある人に比べて循環器疾患での死亡リスクが高いことが明らかになっています[*3]。

また、加齢に伴う筋肉量や筋力の低下である「サルコペニア」、加齢に伴う体力・気力の低下による虚弱状態「フレイル」と、便秘の関連についての研究も始まっています。

フレイルは〝寝たきり予備軍〞ともいえる状態で、その対策は健康長寿を目指すうえで非常に重要です。ほかの病気と同様に早期発見と予防が必要なのです。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中