最新記事

医療

「闘うのをやめるべき」? 慢性疲労症候群とコロナ後遺症に罹患、元CNN記者が語る「前向きになる方法」

Long COVID-led Medicine

2023年1月12日(木)12時30分
メレディス・ウルフ・シザー
ライアン・プライアー

慢性疲労症候群とコロナ後遺症に罹患した経験を持つ元CNN記者のライアン・プライアー A. BLOCH PHOTOGRAPHY

<慢性疲労症候群とコロナ後遺症に罹患した経験を持つ元CNN記者が語る「病者の尊厳」と新しい医療の可能性>

新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから、もうすぐ3年。このウイルスに感染し、回復後も長期にわたって生活に支障を来す諸症状に苦しむ人は世界で1億人超に上ると推測される。

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)をはじめ、感染症が引き金となる慢性疾患は以前から知られていた。そこに新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆるコロナ後遺症)が加わったことで、こうした疾患の解明と治療法の開発に向けた研究に拍車がかかりそうだ。

研究の進展を促す大きな要因として注目されているのが「患者中心の医療」、すなわち患者が医療者と対等な立場で協力関係を築き、自身のニーズと価値観に合ったケアを求めていく医療である。

元CNNの記者で、長年ME/CFSに苦しみ、コロナ後遺症も経験したライアン・プライアーは新著『ロング・ホール』(ポスト・ヒル・プレス刊)で、周囲に理解されづらい慢性疾患の患者の苦痛と、「患者中心の医療」が医療現場にもたらす大きな変革について論じている。本誌のメレディス・ウルフ・シザーが話を聞いた。

230117p52_LNG_02.jpg『ロング・ホール』
ライアン・プライアー[著]
ポスト・ヒル・プレス「刊]

――あなたは10代でなかなか診断がつかない症状に苦しんだ。そういう患者には、医師のどんな言葉が救いになるか。

とても単純な言葉だ。「よく分かります。つらいでしょう」。近代医学の父と言われる医師ウィリアム・オスラーは「患者の訴えに耳を傾ければ、正しい診断ができる」と言っていた。医師は患者の望みを聞こう。なぜ回復したいのか。孫に会うためか、大学院に進むためか。医療の真の目的は、患者が夢を抱くという神聖な能力を取り戻せるようにすることだ。

――患者にできることは?

医師も人間だと理解すること。医師は患者を助けたいと思っているが、彼らもまた現状の医療制度に縛られている。医師を共に治療に取り組む対等なパートナーと見なそう。

オンラインの患者支援組織に参加するのもおすすめだ。患者仲間の助言は大いに役立つ。

医師には何を優先的に治したいか伝えること。最新の研究成果を常にチェックする必要もある。臨床試験に参加し、科学の進歩に貢献しよう。

――あなたは最終的にME/CFSと診断され、その後コロナ後遺症にもなった。この2つは似ている? 違いは?

私の感覚では、ほぼ同じだ。悪魔に神経系を乗っ取られたようだった。活力を失い、死んだ肉の塊のようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

エルサルバドルへの誤送還問題、トランプ氏「協議して

ワールド

米民間セクター代表団、グリーンランドを今週訪問 投

ビジネス

伊プラダ第1四半期売上高は予想超え、ミュウミュウ部

ワールド

ロシア、貿易戦争想定の経済予測を初公表 25年成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中