最新記事

世界初、プラスチックやアルミごみがゼロ 「コーヒー玉」カプセル式コーヒーメーカーが登場

2022年10月16日(日)12時50分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

newsweek_20221015_222248.jpg

CoffeeBのコーヒーボール 写真提供=CoffeeB

早くも、コーヒーボールが売り切れ状態に

コーヒーボールは目下8種類のテイストが選べる(スイスでは1箱4.60フラン=670円から)。コーヒーメーカーはブラックとホワイトの2色だ(169フラン=約2万4千円)。反響は非常に大きく、発売から1か月経った時点で、ミグロおよびCoffeeBのオンラインショップではいくつかのテイストのコーヒーボールが売り切れ、品切れになった店舗もある。筆者の近所のミグロスーパーでも、品数が薄いコーヒーボールが見られた。

ちなみに味の方は、スイスのバーゼルのコーヒーメーカー(中央アメリカのニカラグアの自社農園で豆を栽培し、バーゼルで焙煎し販売している)が試したところ、カプセル式コーヒーメーカーで作ったコーヒーに似ているそうだ。

なぜ、CoffeeBがこれほど注目を集めるのか。単に目新しい商品を試したいという人もいるだろう。しかし、エコ志向が益々高まるなか、カプセルを捨てなくて済む、カプセルをリサイクルに出す手間が省ける等の利点が歓迎され、ネスプレッソ以外のブランドも含め、カプセル式コーヒーメーカーを使ってきた人たちの一部がCoffeeBに切り替えているのではないだろうか。

廃棄される大量のコーヒーカプセル

世界のコーヒーカプセルは全体の約70%が捨てられており、年間廃棄量は約10万トン以上に上る(CoffeeBサイト)。スイスでは、現在、アルミニウム製コーヒーカプセルのリサイクル率は58%だという。同国の飲料用アルミ缶のリサイクル率が100%に近づいているのとは対照的だ。そんななか、アルミニウム製コーヒーカプセルのリサイクル率を高めようと、2020年にネスプレッソとデリカ社が「スイス・アルミニウム・カプセルのリサイクル」という団体を設立し、リサイクル率を75%に引き上げることを最初の目標としている。

スイスは、カプセル式コーヒーメーカーを使っている割合が60%と高い(以下、17%は全自動式、12%はモカポット、7%はドリップ式、4%はコーヒーを飲まない)。今後、新登場のCoffeeBの利用率が一気に高まり、カプセル式の利用率が下がっていくのか、その動向が気になるところだ。

s-iwasawa01.jpg[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止 働き手不

ワールド

米連邦最高裁、中立でないとの回答58%=ロイター/

ワールド

イスラエル・イラン攻撃応酬で原油高騰、身構える投資

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中