最新記事

世界初、プラスチックやアルミごみがゼロ 「コーヒー玉」カプセル式コーヒーメーカーが登場

2022年10月16日(日)12時50分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

この小さなコーヒー玉がコーヒーの世界を変える? 写真提供=CoffeeB

<年間10万トンの廃棄物が出るというコーヒーカプセルを、土に還る素材にした>

インスタントでもドリップ式でもない、カプセル式のコーヒーメーカー「ネスプレッソ」はコーヒー業界に一大革命をもたらし、今や81カ国で販売されている。ネスプレッソは、スイスに本社を置く巨大食品メーカー、ネスレグループのブランドだ。地元でもネスプレッソの販売は浸透している。ネスプレッソが初めて市場に出回ったのは、1986年のこと。それから35年以上が過ぎ、今、サステナビリティを追求した新しいコーヒーメーカーが注目を集めている。スイスの大手小売業ミグロ(ミグロ傘下のデリカ社)が開発した。

コーヒー粉を固めて、カプセルなし

9月初め、小型コーヒーメーカーの新ブランド「CoffeeB(コーヒービー)」が、スイスとフランスで発売された。キャッチコピーは「カプセルのないカプセル式コーヒーシステム」。その謳い文句通り、このシステムの最大の特徴は、プラスチックやアルミニウム製のカプセル廃棄物を出さない点にある。ミグロが、世界で初めてこのボール式コーヒーメーカーを開発したという。

CoffeeBは、特許取得済みの保護膜で包まれた圧縮したコーヒーの粉「コーヒーボール」を購入し、専用のコーヒーメーカーにセットすると熱々のコーヒーが1杯ずつ出来上がる。保護膜は、通常のカプセルと同じように風味を損なわないようにするための酸素バリアの役割を果たしている。使用後はコーヒーボールも、この保護膜も完全に堆肥化できる。家庭のコンポストやミミズ飼育に使え、植木鉢の土に混ぜてもいい。最長12週間で、ボールは完全に分解されるという。コーヒーボールが入ったパッケージ(1箱9個入り)もリサイクルできる。

reuters__20221015215947.jpg

使用後の「コーヒーボール」はそのままコンポストに使える 写真提供=CoffeeB

また、コーヒーメーカーもその大部分はリサイクル素材でできているうえ、設計はモジュール式のため壊れた部分だけを交換できる。コーヒーメーカーも特許を取った。

ミグロの社史で、最も優れたイノベーション

CoffeeBは、開発に5年を要した。システムの仕組みは以下の通り。まずはコーヒーメーカーにコーヒーボールが入ったら、機械内部のお湯でボールを湿らせて柔らかくする。次にボールを前後から押して穴を開け、ボールをお湯で膨らませる。そしてコーヒーを抽出し、ボールが回収トレイに排出される。

発売にあたり、ミグロのファブリス・ツムブルネンCEOは「CoffeeBによって、味覚体験、利便性、廃棄物ゼロを初めて兼ね備えることができた。私たちは、今日の消費者ニーズに応え、環境によい影響も与える技術を開発したと確信している。カプセル不要のシステムは、わが社のサステナビリティ戦略に100%合致している。当社の歴史で最も重要な製品イノベーションだ」とコメントした。2023年春にはドイツでも発売される予定で、その他の国への進出も計画中だという。

newsweek_20221015_222242.jpg

CoffeeBのコーヒーメーカー 写真提供=CoffeeB

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IAEA、イランのナタンズ核施設の放射線量に上昇な

ワールド

イスラエルがイランに先制攻撃、核施設など標的 米は

ビジネス

4月第3次産業活動指数2カ月ぶり上昇、「一進一退」

ワールド

トランプ政権、イラン攻撃のイスラエルと距離 核協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中