最新記事

ライフスタイル

高層タワマン全戸で「トイレ一斉使用」 その時、何が起きる?

2021年1月31日(日)12時20分
神舘 和典(ジャーナリスト) 西川 清史(編集者) *東洋経済オンラインからの転載

すると、室長も率直に答えた。「もし全層で同時に水洗したら、下であふれます。100%噴き出します。いきなり排泄物が飛び出すことはないと思いますが、落ちてくるものに押されて、空気は間違いなく噴きます」

「えー!」こちら2人はそろって声を上げてしまった。あふれたらすごいなあ、と期待しながらも、それでも、よもやあふれることなどないだろうと思って取材にやってきたのだ。ところが、室長はこともなげに「あふれる」と言うではないか。

「規模にもよりますが、マンションの縦配管は直径10センチメートル、横引き配管は20センチメートル程度です。設計上は、同じタイミングでトイレが流されるのは、諸説あるものの、15層で1つと考えることが通例となっています。もし15層のうち、2層以上の水洗が重なったらあふれることになります」

ごまかさずにきっぱりと答える室長の、なんと格好いいことか。

同じ時間帯にトイレが重なる可能性も

日本人の生活のサイクルは、朝起きて、食事をして、仕事や学校へ出かける前にトイレに行くのがスタンダードだ。ということは、同じ時間帯に排泄が重なるのではないだろうか。

「確かに、朝トイレに行く人は多いでしょう。でも、心配はいりません。水洗トイレのタンクの中に5リットル水が入っていたとして、その5リットル全部が一瞬で流れるわけではないからです。水洗の流水ピークは1.5~2秒。このタイミングが重ならなければ大丈夫です。もちろん、ピークが重なる可能性はゼロではありません。でも、いまのところ通常の生活の中で排泄物が噴出したという話は聞いたことはないですね」

室長は表情も変えずに話す。「設計上は2層以上の排泄のピークが重なるとあふれますが、実際には3層が重なっても問題は起きていないようです。あくまでも結果ですけれど。私たちがマンションでテストをするのは、建ったばかりの、入居前のタイミングになります。配管内はきれいな状況で、何の障害もありません。だから、設計通りに水は流れます」

竣工すると、配管内の環境は変わる。「人が入居すれば、配管内は汚れますよね。すると、水は汚れに妨げられて少しおだやかに流れるようになります。ご参考までに付け足すと、バスタブの排水はまったく心配ありません。6~7分かけてゆっくりと流していくからです」

では、便秘症の人の何日もかけて硬くなった大きなウンチが配管に詰まることはないのだろうか。わざわざ大手不動産会社にまでやってきて聞くことか、と思わないでもないが、知りたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人

ワールド

プーチン氏、対ウクライナ姿勢変えず 米制裁期限近づ

ワールド

トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命令 メ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中