最新記事
ヘルス

便秘にサラダは無駄? 専門医が解説、本当に便秘にいい食べものは

2021年1月12日(火)06時49分
前田 孝文(医師、辻仲病院柏の葉 便秘外来 臓器脱センター医長) *PRESINDENT Onlineからの転載

便秘の人が取るべき食べ物

水溶性食物繊維は便の形を作るのではなく腸内細菌の栄養になっています。善玉菌が元気になると、体に良い様々な有機酸(酪酸や乳酸、プロピオン酸)が作られて、腸の動きが良くなるのです。これらの有機酸が大腸を動かすエネルギーとなり、腸の蠕動運動が良くなって便秘が改善します。ほとんどの野菜は不溶性食物繊維の方が水溶性食物繊維よりも多く含まれています。ですから食物繊維を摂ろうと意識するときは、水溶性食物繊維を多く摂るよう意識することが大事です。

水溶性食物繊維を多く含むのは、らっきょうやにんにく、ごぼうなどの根菜類やワカメなどの海藻類です。また、リンゴやキウイフルーツ、プルーンなどの果物も水溶性食物繊維が豊富で、便秘解消に役立ちます。

姿勢を変えるだけでも効果が

排便の姿勢を見直すだけで便秘が良くなることがあります。「便が出にくい」「残便感がある」という症状の人は効果が出やすいです。姿勢を見直すことはすぐに出来ることなので、多くの患者さんに説明しています。

排便時の姿勢を変えると、直腸と肛門が直線状になって、腹圧が伝わりやすくなります。直腸は、肛門の近くにあって、腸に巻き付いている筋肉(恥骨直腸筋)によって前方に引っ張られ、クの字型になっています。恥骨直腸筋が腸をお腹側に引っ張ることによって、普段は便が漏れないようになっています。

排便の時にいきむと、恥骨直腸筋が緩んで直腸が直線的になります。そして腹圧によって便が肛門から押し出されるのです。便を出しやすくするためには、腸がなるべく肛門に向かって直線的になることが望ましいです。

フランスの彫刻家、オーギュスト・ロダンが1902年に制作したブロンズ像「考える人」をご存知の人は多いのではないでしょうか。「考える人」の姿勢をとることで、直腸の角度が緩やかになり便が出やすくなります。正しい姿勢というと、背筋を伸ばすことを考えてしまいますが、トイレでは少しだらしない姿勢の方が便は出やすくなります。排便時はこの「考える人」の姿勢がお薦めです。

reuters__20210111_221044.jpg

『男の便秘、女の便秘』より(イラスト=安良岡和美)

トイレに足台を置いてみる

排便姿勢を工夫する方法として、足台も有効です。20cmほどの高さの足台を便座の近くに置き、足を乗せます。この時、足はしっかりと足台の上に乗せて、踏ん張れるようにしましょう。つま先だけ乗るような狭い台や、バランスが不安定な台はよくありません。

足台を置くことで、膝の位置が高くなり足をお腹で抱えるような形になります。これによって「考える人」のポーズと同じように、腸が肛門に向かって直線的になり、恥骨直腸筋が緩みやすくなります。その結果、便が出やすくなるのです。

newsweeek202101112155.png排便をスムーズにするための専用の足台が市販されています。最初に発売されたのが「スクワティポティ」という製品です。特殊な工夫があるわけではないのですが、便座に収まりやすいように、足台の形状がU字型になっています。

トイレ専用の足台を購入しなくても工夫して高さを持たせることはできます。まずはお風呂用の椅子などを使って試してみるのはいかがでしょうか。簡単なものなら100円ショップなどでも売っています。試してみてうまくいくようなら、専用の足台を買ってもよいかもしれません。

※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ブラジル、米50%関税に報復示唆 ルラ大統領「相互

ワールド

英仏首脳、核抑止で連携合意 ウクライナ支援も強化へ

ビジネス

米金利上昇リスク、市場は過小評価=JPモルガンCE

ワールド

米国務長官、ASEAN地域の重要性強調 関税攻勢の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 8
    昼寝中のはずが...モニターが映し出した赤ちゃんの「…
  • 9
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 10
    アルゼンチン経済にまさかの奇跡、インフレ克服と成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中