日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由

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2025年9月23日(火)12時00分
巽 孝之(慶應義塾大学文学部名誉教授、慶應義塾ニューヨーク学院長)

筒井康隆や村上春樹から高橋源一郎、笙野頼子、大原まり子、笠井潔、柾悟郎らに至るインタビューと各人の代表短編翻訳を抱き合わせたプロジェクトは、大きな反響を呼んだ。

同じ頃、サンフランシスコに拠点を置く英訳専門出版の「ハイカソル」が、現代日本文学のさまざまなジャンルにおける収穫を、続々と出版開始した(ハイカソルという奇妙な社名は、第2次大戦で日本を含む枢軸側が勝利していたら......という歴史改変小説の傑作、フィリップ・K・ディックの『高い城の男(ザ・マン・イン・ザ・ハイ・キャッスル)』の「ハイ・キャッスル」の発音を、ジャパネスクふうになまらせたものだという)。


同社の英訳リストは、小松左京の『復活の日』(1964年)や光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』(67年)、さらに伊藤計劃の『虐殺器官』(07年)などの古典SFから、宮部みゆきの『ブレイブ・ストーリー』(03年)のようなファンタジー、高見広春の『バトル・ロワイアル』(99年)のようなバイオレンス、さらには池澤夏樹の『マシアス・ギリの失脚』(93年)に代表される魔術的リアリズム風味の主流文学まで多岐にわたっている。

やがて2010年には、クールジャパンは経済産業省主導の文化経済政策となった。それに先立つ06年に、ミネアポリス芸術大学教授フレンチー・ラニングを編集長とする日本の大衆文化研究誌「メカデミア」が創刊され、同誌の名を冠した年次大会が開催されるようになったのも、駆動力の1つだろう。

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