日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由

GAINED BY TRANSLATION

2025年9月23日(火)12時00分
巽 孝之(慶應義塾大学文学部名誉教授、慶應義塾ニューヨーク学院長)

小川洋子

20年国際ブッカー賞最終候補の小川洋子 ULF ANDERSEN/GETTY IMAGES

川上弘美

川上弘美も今年、同最終候補に KATE GREEN/GETTY IMAGES

だが10年代には、同誌周辺から日本人学者による論考の英訳ばかりか、思弁小説(スペキュレイティブ・フィクション)翻訳プロジェクトが立ち上がったのも、見逃せない。

前述のように、思弁小説は1960年代にSFの「新しい波」(ニューウェーブ)として勃興し、外宇宙(アウタースペース)ではなく内宇宙(インナースペース)の探求を目指す。


昨今では、相次いでイギリス最大の文学賞の翻訳部門、国際ブッカー賞の最終候補になった小川洋子の『密やかな結晶』や川上弘美の『大きな鳥にさらわれないよう』も、共にディストピア的思考実験を徹底した思弁小説の成果である。

小川洋子『密やかな結晶(The Memory Police)』

小川洋子『密やかな結晶(The Memory Police)』 COURTESY OF PENGUIN RANDOM HOUSE(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう(Under the Eye of the Big Bird)』

川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう(Under the Eye of the Big Bird)』 SOFT SKULL PRESS(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

その可能性に現代日本文学英訳のフロンティアを見た「メカデミア」編集委員のマッギル大学教授(現シカゴ大学教授)トマス・ラマールは、筆者との共同監修になるラインアップ(のちに「並行未来(パラレル・フューチャーズ)」の名でシリーズ化)として、川又千秋『幻詩狩り』、荒巻義雄『神聖代』、それに大原まり子『ハイブリッド・チャイルド』を順次刊行し、多くの英語圏読者をつかんだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、イラン関与の攻撃を警告 イラクの米石油施設・ホ

ワールド

イランが米西海岸にドローン攻撃の可能性、当局が加州

ワールド

G7首脳、ロシア制裁維持で一致 中東情勢緊迫化でも

ワールド

G7、エネルギー安定で協調確認 IEA備蓄放出を歓
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「邪悪な魔女」はアメリカの歴史そのもの...歌と魔法…
  • 7
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 8
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 9
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 10
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中