吸血鬼スリラー×黒人差別...新感覚ホラー『罪人たち』は娯楽映画なのに「歴史への考察」が魅力?
Not Your Average Vampire Thriller
『罪人たち』がよくある南部ゴシックものの吸血鬼スリラーではないのは、この場面を見れば明らかだ。本作は血に飢えた怪物の映画であると同時に、アフリカ系アメリカ人のボップ文化が持つ深いルーツについて思索している。
クーグラーはこれまで『フルートベール駅で(Fruitvale Station)』、マーベル・コミック原作の『ブラックパンサー(Black Panther)』シリーズ2作、『ロッキー』シリーズの初のスピンオフ『クリード チャンプを継ぐ男(Creed)』を手がけてきた。
本作は現実の事件や既存作品に基づかない初の長編映画で、個人的色彩が色濃い完全なオリジナル作品だ。
スモークとスタックはシカゴの暗黒街で9年間過ごした後、地元に戻ってきた。
彼らの物語は、20世紀前半に起きた南部からの黒人の大移動、ミシシッピ・デルタやシカゴで花開いたブルースの歴史、黒人差別を制度化したジム・クロウ法やKKK(クー・クラックス・クラン)の暴力の脅威がもたらした集団的トラウマの寓意にほかならない。
物語展開にもひねりが
なんだか小難しそう? 断っておくが、ホラーならではの演出やバンパイア退治、驚くほどあけすけなセックスシーンもたっぷりだ。主流派のアクション映画には珍しいことに、女性の性的快感がはっきりと取り上げられている。
描かれるのはわずか24時間の出来事だが、アクションとホラーはなかなか顔を出さない。冒頭から約30分間は、開店当夜に向けた兄弟の人材探しが焦点になっている。