青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡...池井戸潤の『俺たちの箱根駅伝』を超える実話
箱根駅伝の10区間のレギュラー区間を巡るライバルとの戦い
『俺たちの箱根駅伝』に登場する明誠学院大の隼人は大学卒業後、家業を継ぐことになり、箱根駅伝が “ラストラン” となる。選手たちには家族がいて、仲間がいる。その絆も本書の見どころだ。
どの大学も箱根駅伝を走る者より、走らない者のほうが圧倒的に多い。そのなかでも部員たちは箱根駅伝という大きな目標に向かって、エネルギーを注いでいる。
日の当たらない場所でも数々のドラマがある。これまで取材してきたなかで、裏方の涙も印象に残っている。それは過去の早大にあった。
2017年度の4年生は長距離選手が6人だけだった(他に男子マネージャーが2名)。1年時の春には22~23人の長距離部員がいたが、実力不足の選手は次々と退部した。早大は2年生の夏に学年から主務候補となる部員を1人だすというのが慣例になっていたが、そこで厳しい現実が待っていた。
1年生の箱根が終わった後、同学年で残った長距離部員は8人。そのなかから3人の選手がスタッフに呼ばれて、「このなかからマネージャーを出すから」と宣言された。3人のうちSとKは同じ高校だったのだ。
ふたりは愛知県の公立進学校の出身。ともに早稲田カラーの臙脂(えんじ)のユニフォームで箱根駅伝を走る夢を追いかけてきた。箱根駅伝に出場できるのは10人。出走の枠を勝ち取るレギュラー争いも熾烈だが、下位グループにも “負けられないバトル” があった。
SとKは一緒に練習をしていても気まずさがあったという。そして2年生の7月下旬。学年ミーティングでSがマネージャーに選ばれた。
「僕は泣き虫なんですけど、その場では泣きませんでした。でも、ミーティングが終わって、ひとり暮らしの部屋に帰ってから泣きましたね。ひたすらひとりで。悔しくて。精神的にも参っていたので、最後の記録会を走った後に、『やっと解放される』という気持ちもあったんです。高校時代から一緒にやってきたKから『俺は今まで通り頑張るから』と言われて、それで腹をくくれた部分もあったのかなと思います」
Sは4年時に主務を務めて、チームを支えた。Kはというと、箱根駅伝のエントリー候補に名前が挙がるほど成長したものの、レギュラー枠の戦いに敗れ、夢はかなわなかった。
こういうエピソードを知ると、中継される箱根駅伝に奥行が出る。倒れんばかりに走る選手も立派だが、裏方として支える部員の気持ちや、本番を迎えるまでの彼らの汗と涙を思うと頭が下がる思いだ。
『俺たちの箱根駅伝』にはさまざまな立場の人間が登場する。それぞれに箱根駅伝があり、そのゴールのかたちも異なる。筆者が知っている箱根駅伝と少し違う部分もあるが、描き出される濃厚なドラマと人間模様に、いつしか自分の人生を照らし合わせて、胸がいっぱいになる。
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