【インタビュー】苦悶するシンガー ニック・ケイヴが「私生活の悲劇」を乗り越え、たどり着いた『Joy』

A Kinder and Gentler Nick Cave

2024年10月25日(金)14時24分
デービッド・チウ(音楽ライター)

ピアノを弾くニック・ケイヴ

音楽は現実世界を超越した経験が許される数少ない機会だと考えている MEGAN CULLEN

「バッド・シーズを復活させたような感覚なんだ。(音楽)活動と人生が一気に爆発したような感じ。喜びに満ちている。(新作には)『Joy』という曲がある。この言葉が実際に何を意味するのか、私にはよく分かる。見た目以上に深い言葉なんだ」

Nick Cave & The Bad Seeds - Joy (Title Video)

亡きメンバーへの想い

バッド・シーズ以前のグループ、バースデイ・パーティー時代の1970年代後半~80年代初頭から、ケイヴはカオス(混沌)のアーティストだった。その男が今、こんな言葉を口にする。

「あるレベルの喜びは苦しみの一種と言ってもいいと思う。われわれ人間とは何者なのかを知ることで、ある種の上昇気流に乗った爆発が起こるんだ。このアルバムはそんな感じ。とにかく爆発し続ける」

ロックと電子音楽の影響を組み合わせた『ワイルド・ゴッド』のエネルギッシュなサウンドは、内省的で余白の多い『スケルトン・ツリー』と『ゴースティーン』に対する意図的な反動ではないと、ケイヴは語る。

制作当初から望んでいたのは、バッド・シーズのメンバーをもっと前面に出したいということだった。「バンドとしての一体感を強調したいと思っていた。やっと彼らが前に出て演奏できるアルバムができた。彼らも全力でやってくれた」

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