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「もう遅いなんてない」91歳トライアスロン・レジェンドの毎日食べている食事メニューのヒミツ

2024年10月31日(木)11時10分
桜井 美貴子(ライター・編集者)*東洋経済オンラインからの転載
「今さらもう遅いなんてない」91歳のトライアスロンのレジェンドが20年以上続けている食事

2019年、86歳のときにトライアスロン・オリンピック・ディスタンスで優勝(写真:稲田弘さん提供)

<スイム3.8km、バイク180km、ラン42.2km――総距離226kmの鉄人レースを完走する、世界チャンピオンで91歳の現役トライアスリート・稲田弘さん。その驚異の肉体を支える食事ポリシーとは?>

早朝6時。千葉県千葉市稲毛区のトライアスロンクラブのプールに飛び込み、1時間半かけて3500mを泳ぎ切る。

稲田弘さん、91歳。

世界最高齢の現役トライアスロン選手にして、世界最高齢のアイアンマン世界選手権完走者のギネス世界記録™を持つ、文字通りの鉄人である。

アイアンマンレースとはトライアスロン競技の最高峰といわれ、スイム3.8km・バイク180km・ラン42.2kmの総距離226kmを、16〜17時間の制限時間内に走破する世界一過酷なレースだ。

【きっかけは「定年後のメタボ解消」】

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2024年、オーストラリア・ケアンズで行われたトライアスロンの大会に参加した。積極的に海外遠征をしている(撮影:山本淳一)

稲田さんは70歳から始めたトライアスロンを経て、79歳から9年連続でアイアンマンレース世界選手権に出場。そして80歳と83歳(80-84歳カテゴリー)、85歳(85-89歳カテゴリー)のときには世界チャンピオンに輝いた。

特に85歳では新カテゴリー初の世界チャンピオンとなり、同時に自身が持つギネス世界記録「アイアンマン世界選手権の世界最高齢完走記録」も更新する。

「80代前半は体力的に絶好調。80歳の初優勝のときは早くゴールしすぎて、フィニッシュゲートに観客が誰もいなくてね(笑)。最後までスピードも維持できて、余裕のゴールでした」

飄々と語る稲田さんだが、90代に突入した現在も週6日のトレーニングは欠かさず、ベスト体重を維持。血圧は正常、老眼鏡不要の裸眼で新聞を読み、聴覚を意識するためにテレビの音量は低めに設定しているという。

「骨折は多いけど、病気とは無縁」とサラリと話すので驚く。補足すると、骨折の原因は高齢者に多い室内での転倒ではなく、バイクからの落車など、ハードなトレーニングによるものだ。

「若い頃から取り立ててスポーツマンというわけではなかった」という稲田さんが、トライアスロンにはまっていくきっかけになったのは、60歳で始めた水泳だった。

その頃、難病を患って自宅療養する妻の介護をするため、記者として活躍したNHKを定年退職。メタボ解消と健康維持を目的に自宅そばのスポーツジムのプールに通い始めたのである。

「60歳で若かったから結構速く泳げるようになって、体も締まってきた」と手ごたえを感じた稲田さんは、水泳仲間とスイム1.5km・ラン10kmのアクアスロン大会に出場し、完走する。

そこでロードバイクで颯爽と会場入りする選手の姿に「かっこいいなあ!」と憧れて、69歳のときにロードバイクを購入した。記者時代から探究心旺盛、ピンときたものにはすぐ飛びつくという稲田さん。これが70歳のトライアスロンデビューにつながった。

メタボ解消の水泳から10年。さらにその先の10年後に、アイアンマンレースの世界チャンピオンになるなど、想像すらしなかった。

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