最新記事
映画

「同性愛者の神様」と「空飛ぶ女性器」!?...「俳優人生で最大の屈辱」と出演者が語るほどのキテレツ低予算映画『ディックス』とは?

Delightfully Depraved

2023年10月6日(金)14時00分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)
映画『ディックス』

(写真左から右へ)自分の限界に挑んだ父親役のレーン、神様役のヤン、全く似ていない一卵性双生児のシャープとジャクソン(作品の一場面) A24ーSLATE

<異色のコメディー『ボラット』の監督が手がける、最新ミュージカル映画の世界観について...>

9月7日、トロント国際映画祭で行われた『ディックス──ザ・ミュージカル』(日本公開は未定)の世界初の試写会で挨拶した共同脚本のジョシュ・シャープがお礼の言葉を述べた相手は、友人や出資者など、お決まりの面々だけではなかった。

スピーチの締めくくりの言葉は異例のものだった。「映画俳優組合、ありがとう」と、シャープは言った。「昨日の朝まで、ここに来られるとは思っていなかった」

『ディックス』の配給元であるA24社は、報酬やAI(人工知能)の使用をめぐってストライキを継続している映画俳優組合と米脚本家組合の要求を既に受け入れていたので、この映画の出演者が試写会に出席しても問題はなかった。

しかし、主だった出演者のネーサン・レーン、メーガン・マラリー、ミーガン・ザ・スタリオンは来なかった。

出演者兼共同脚本のシャープとアーロン・ジャクソン以外で出席したのは、ボーエン・ヤンだけだった(ヤンは、出番こそ少ないけれど強烈な役を演じた。なんと、毒舌とキラキラのホットパンツを好む同性愛者の神様の役だ)。

監督のラリー・チャールズはメッセージだけ寄せたが、映画の中ではその存在をはっきり感じ取れる。チャールズの過去の監督作品で言えば、計算し尽くされたカオスが展開される『ボラット』と、全てが奇想天外な『ボブ・ディランの頭のなか』の中間のような作品に仕上がっている。

ストライキで映画スターがプロモーションに参加しにくい状況の下、大手の配給会社は作品の公開延期を決めたケースも多い。この秋の映画シーズンは、『ディックス』のようにエキセントリックな低予算映画が主役になりそうだ。

実際、このミュージカル映画はかなりキテレツな内容だ。ストーリーを紹介しようとすると、どうしてもギャグをネタバレしてお叱りを受けたり、精神の健康を心配されたりする危険が付いて回る。それでも、手短に説明すると──。

クレイグ(シャープ)とトレバー(ジャクソン)は一卵性双生児だ。離婚した両親にそれぞれ引き取られて、別々に育てられた。自分に双子の兄弟がいることは、2人とも知らされていなかった(もっとも、シャープとジャクソンの外見が似ても似つかない点も笑いどころの1つだ)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

12月利下げは不要、今週の利下げも不要だった=米ダ

ビジネス

利下げでFRB信認揺らぐ恐れ、インフレリスク残存=

ワールド

イスラエル軍がガザで攻撃継続、3人死亡 停戦の脆弱

ビジネス

アマゾン株12%高、クラウド部門好調 AI競争で存
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中