最新記事

キャンセルカルチャー

カニエ・ウェスト、数々の暴言や奇行を振り返る...それでも「キャンセル」されない理由とは?

Canceling Kanye West

2023年9月19日(火)16時30分
シャノン・パワー

ウェストは00年代に入ってラッパーとして称賛を集めるも、間もなく問題行動の代名詞となった。05年にはハリケーン・カトリーナの被害者救済イベントで、「(ジョージ・W・ブッシュ大統領は)黒人のことなど気にかけちゃいない」と述べて物議を醸した。

09年にはMTVビデオ・ミュージック・アワーズで最優秀女性アーティストビデオ賞に輝いたテイラー・スウィフトのスピーチに乱入。マイクを奪い、ビヨンセが受賞すべきだったと暴言を吐いた。16年にはシングル「フェイマス」のミュージックビデオに、スウィフト似の人形とベッドにいる場面を盛り込んだ。

自分のルーツである黒人社会も標的にし、18年に「奴隷制は(黒人の)選択だったように思える」と発言。BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動に火を付けたジョージ・フロイド殺害事件について、フロイドは警官に殺されたのではなく薬物の過剰摂取で死亡したと口にしたこともある。

21年にリリースした10枚目のスタジオアルバム『ドンダ』では、性暴力で告発されたマリリン・マンソン、同性愛者への差別発言を批判されたダベイビーと共演。ポッドキャスト「ドリンク・チャンプス」で、「俺たちをキャンセルすることはできない」と豪語した。

昨年10月には「白人の命は大事」のスローガンをあしらったTシャツを着てイージーのファッションショーに登場し、世間を騒がせた。名誉毀損防止連盟(ADL)はこのスローガンを、白人至上主義団体が使う「ヘイトスピーチ」に指定している。

騒ぎはさらに過熱した。ウェストは反ユダヤ主義的な発言を連発し、アドルフ・ヒトラーが好きだと言い放った。陰謀論者アレックス・ジョーンズのポッドキャストに出演した際には、「ナチスはいいこともした」と述べた。

メンタルヘルスに不安も

パートナー企業も我慢の限界に達したようだ。既に見限っていたGAPのほか、アディダスとバレンシアガが契約を打ち切り、取引銀行のJPモルガン・チェースも関係を解消した。

ツイッター(当時)も昨年10月にウェストのアカウントを凍結。同社を買収したイーロン・マスクが凍結を解除したが、反ユダヤ発言を受けて再び凍結した(現在は解除されている)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中