最新記事
キャンセルカルチャー

カニエ・ウェスト、数々の暴言や奇行を振り返る...それでも「キャンセル」されない理由とは?

Canceling Kanye West

2023年9月19日(火)16時30分
シャノン・パワー

だがパタクによれば、問題はウェストがキャンセルされるか否かよりもキャンセル自体にある。「キャンセル・カルチャーは人を辱めるだけだ」と、彼女は言う。「自分の言動の責任を取らせたいなら、排除しても効果はない。人をキャンセルするのは悪さをした子供に何が悪いのかを説明せず、言い分も聞かずに、ただ反省しろと言って部屋に閉じ込めるのと同じ。そうした行動は相手の心に恥辱の種をまく。種はやがて芽を出し、排除され、つるし上げられるたびに大きくなる」

排除する前に「その人の考え方、メンタルヘルス、人生と言い分を考慮するのが大切」だとパタクは説く。「ウェストの発言を聞くと、私は深刻な精神疾患を抱えた人々をケアした若い頃の体験を思い出し、胸が痛む。行動の裏にいる人間を理解しようと努力すれば、思いやりのある関係を築く機会になる」

ウェストは16年に双極性障害と診断されたが、薬を飲まないほうが創造性を発揮できるから服用をやめたと数年後に述べている。

差別発言は悪いとした上で、パタクは「ウェストの人生を知るように努め、彼を人として理解すること」を勧める。

そもそも、ウェストほどの大物を社会的に抹殺するのは不可能かもしれない。

「奴らに俺のラップをやめさせることはできない。そうだろ?」。03年のデビュー曲「スルー・ザ・ワイヤー」で、ウェストはうそぶいた。交通事故で粉砕されたあごをワイヤーで固定した状態でレコーディングしたこの曲がヒットし、そこから彼はスターになったのだ。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中