「ジャニーズ神話」が死んだ日...潮目が変わった「公然の秘密」性加害タブー

THE END OF THE MYTH

2023年6月23日(金)15時30分
デービッド・マクニール(ジャーナリスト、聖心女子大学教授)

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数々の雑誌の表紙を飾ってきたジャニーズのアイドルたち NOZOMI OHASHIーNEWSWEEK JAPAN

主要メディアはいまだにスキャンダルの全容解明に踏み込まず、多くのファンの「裏切られた」という思いに応えようともしていない。だがネット上には、困惑と怒りのコメントがあふれている。

当然のことながら、ジャニー喜多川の行為に「見て見ぬふり」をしてきた新聞やテレビなど、主要メディアの責任を問う声もたくさんある。例えば、SNSにはこんな投稿があった。

「ジャニーズのファンとして、事実としてあったことには驚いた」

「嵐のファンをしていたから信じたくない気持ちが一番に出たけど、日本のメディアが報道しないから、裏で何かあるぞって思ってた」

「推しが『性暴力被害者かも』と思われるのがつらい」

「前から知ってたよって感じ。他の事務所は女が社長に体売ってますけど?って思う」

多くのファンと同じように、学習院女子大学に通う中村真悠子(21)も虐待の話を聞いて「ショック」だったという。

「私の大好きな彼が若い頃にそんな目に遭ったと噂で聞いて、それでも彼が今もジャニーズにいるのは驚き」

一方、聖心女子大学4年の若林美和(22)は、ショックを受けながらも、なんとかジャニーズ事務所を残してあげたいと思っている。

「アイドル文化を先輩から後輩に引き継ぐファミリー感のある会社だと思うので、そのいいところは残してほしいと今でも思っている。でも認めるべきことは認めて、きちんと謝罪、改善をしてほしい」

被害者のメンタルを破壊した

もちろん、喜多川の築き上げた巨大な怪物企業にかつてのような勢いがないことは、ファンも承知している。SMAPの4人やKing & Princeの平野紫耀や神宮寺勇太の退所を見れば分かると、若林は言う。

「私たちが中学生の頃に比べると、すごく危機感がある。今は円満退社の人がほとんどいない。マネジメントに問題がある証拠だ」

ジャニーズ事務所のイメージが低下したのは確かだが、現在も所属タレントの顔をテレビで見ない日はない。出版社にとっても、ジャニーズ所属タレントはドル箱だ。

シュワルツは「日本のエンタメ業界の癒着は驚くほどひどい」と指摘する。

「テレビ局が彼のスキャンダルを報じていたら、喜多川に出演タレントを引き揚げられ、窮地に陥っていただろう。喜多川の影響力は映画やテレビなど、エンタメ業界のどこでも強大だった」

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