最新記事

音楽

サブカルの域を越え、紅白にも続々登場 今から聴きたい大人におすすめのボカロ曲&歌い手は?

2022年12月30日(金)10時00分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
初音ミク

舞浜アンフィシアターで開催された2014 MTV Video Music Awards Japanに出演した初音ミク(2014年6月) Yuya Shino-REUTERS

<ボカロP・ハチとして活躍していた米津玄師、ボカロPのAyaseが参加する2人組ユニット「YOASOBI」、歌い手として初めて紅白に出場した「まふまふ」──今日の日本の音楽シーンに大きな影響を与えるボカロ文化の成り立ちと、入門におすすめの楽曲・歌い手を紹介する>

ボカロP、ボカロ曲、歌い手──。「ボカロ文化」特有の言葉を耳にしたことはあっても、10~20代の若者向けサブカルチャーのイメージが強く、80~90年代J-POPやバンドブームに触れた"かつての若者たち"は自分とは馴染みが薄いものと思っているかもしれません。けれど最近は、「音楽番組で取り上げられていた」「たまたま耳にしたら印象的だった」などと、気になっている"大人たち"も多いのではないでしょうか。

ボカロPとは、VOCALOID(ボーカロイド)などの音声合成ソフトで歌声を付けた楽曲(ボカロ曲)を制作して発表する作曲家を指します。歌い手とは、既存の曲を自ら歌ってカバーした動画をネット上に投稿している人たちのことです。もともとはアマチュアシンガーを示していましたが、通常の人には出せないような広い音域や早口の曲が多い「ボカロ曲」にチャレンジして人気を集め、大手レコード会社からメジャーデビューを果たした歌い手もいます。

近年は、ボカロ曲の作り手と歌い手は、ネットカルチャーやサブカルチャーにとどまらず、日本の音楽シーンに大きな影響を与えています。年末のNHK紅白歌合戦にも2018年以来、ボカロ文化の出身者が相次いで登場しています。今年も、歌い手出身で「22年の音楽シーンの顔」とも言える存在となったAdoが、劇場版アニメ『ONE PIECE FILM RED』で歌唱キャストを務めた登場人物「ウタ」の名義で出場します。

これからボカロ文化に触れてみたい大人のために、ボカロ文化の成り立ちを振り返り、入門としておすすめの楽曲、歌い手を紹介しましょう。

「参加型のサブカルチャー」として発展

かつては音楽活動をしたければ、自分で楽器を演奏したり、バンドメンバーを募ったりしなければなりませんでした。さらにプロのミュージシャンになりたければ、ライブ活動やデモテープで音楽関係者の目に留まる必要がありました。

ところが、2000年代になって家庭用PCやスマホが普及すると、誰もが音楽ソフトを使って自動演奏や作曲が容易にできる時代が到来しました。さらに、大手楽器メーカーのヤマハがVOCALOIDを03年に発表すると、歌声すらも簡単に合成し、パソコン上で楽器と同様に扱えるようになりました。

インターネット回線の容量や速度も、急速に進歩しました。作成した楽曲は、ニコニコ動画やYouTubeなどの動画投稿サイトに誰もが自由に投稿できるようになり、視聴者からの感想や評価も簡単に得られるようになりました。

とりわけ、07年に「VOCALOID2 初音ミク」が発売されると、可愛らしい歌声やイメージキャラクターも相まって人気が爆発。初音ミクが歌う多数のボカロ曲が、ネット上に投稿されます。同時に、ボカロ文化は、投稿されたボカロ曲に対して、視聴者がコメントしたり、歌ってみたり、ファンアートの制作をしたりするなど、積極的に関わる「参加型のサブカルチャー」として若者に支持され、発展していきます。

その後、ボーカロイドの英語版も作られたことで、ボカロ人気は海外にも浸透します。初音ミクはボカロ文化のアイコンになり、11年にGoogle ChromeのCMに登場したり、14年にはレディー・ガガのツアーに参加したりしました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中