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【大谷翔平MVP】取材歴35年MLBベテラン記者が語る「野球の神様ベーブ・ルースを超える偉業」

A SINGULAR GREATNESS

2021年11月19日(金)11時30分
ゴードン・イーズ(スポーツジャーナリスト)

MLBで14年間プレーし、オールスター戦に3度出場したデービッド・ジャスティスは8月24日、大谷は世界各地から才能ある選手が集まる今の時代に想像を絶することをやっていると、米ニュースサイトのTMZスポーツで指摘した。一方、ルースは有色人種の選手と競うことはなかった。

「ベーブ・ルースの対戦相手は農民だった」と、ジャスティスは語って物議を醸したが、本当に言いたいことは別にあった。「当時の投手は完投が当たり前だった。あの頃の選手が使っていたグローブはひどいものだった。それだけでなく、当時は専門職の選手もいなかった。(ニューヨーク・ヤンキースで絶対的な抑えのエースだった)マリアーノ・リベラもいなかった。(通算300勝の先発左腕)ランディ・ジョンソンもいなかった」

「それに(ルースは)1つの人種としか対戦しなかった。ニグロリーグの選手とは一切対戦しなかった。アジア系の選手とも対戦していない。ラテン系の選手とも。つまり、限られた集団としか対戦しなかった」

1919年のシーズン終了後、ヤンキースに移籍したルースは外野手1本に絞り、34年に引退するまでマウンドに上ったのはわずか5回だった。自分にとっても二刀流は無理があると、ルース本人も認めていた。

「1人の人間が一定の間隔で投手をやりながら、同時に他のポジションもこなす――そのペースを毎年維持できるとは思わない。今シーズンはできる。僕はまだ若くて頑丈だから。この仕事は嫌いじゃないが、何シーズンもできる保証はない」

ルースがこう語ったのは1918年、23歳の時だった。二刀流をもう1シーズン続けた後、この偉大な実験は終わった。

27歳になったばかりの大谷は、同時代の多くの選手が想像もしなかったことをやり続けられるだろうか。

疲れがたまっていたのかもしれない。8月18日に40号を放って以降の大谷は、本塁打の量産ペースが鈍り、シーズン終了時点で46本。アメリカンリーグのホームラン王争いで、トップのサルバドール・ペレスと、ブラディミール・ゲレロJr.には2本差をつけられた。投手としても、9月3日に9勝目を挙げた後は足踏みが続き、ルース以来103年ぶりの「10勝&10本塁打」は結局、達成できなかった。

しかし、だからといって私たちがこれまで愛してきた「ショータイム」が終わるわけではない。投手または打者として毎日プレーするのが、大谷という選手の真骨頂だ。ルースはどちらかを選ぶことに満足していたかもしれないが、大谷の場合はまだその段階ではないし、これからもずっと二刀流を貫く可能性がある。それこそ、ショーヘイ・オオタニの並外れた偉大さなのだ。

(筆者は受賞歴多数のスポーツジャーナリスト。全米各地でのスポーツ取材歴40年。そのうち18年間はボストン・グローブ紙やスポーツ専門テレビ局ESPNでボストン・レッドソックスを担当した)

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