最新記事

ゲーム

新型コロナの不安を『どうぶつの森』が癒やすワケ

A Game for Surviving COVID-19

2020年4月23日(木)19時15分
ケリー・ウィン

maglifestyle200423_domori2.jpg

欲しい道具や家具は手作り NINTENDO

「今は誰にとっても対処しなければならない課題が山積している。ほかの人より大きな負担を背負わされている人ももちろんいる」とゲーム作家のエバン・スコルニクは言う。「みんなが新作の『どうぶつの森』に飛び付いたのも無理はない。好きに動き回れる場所に行き、人と会い、素敵なものを作ったりするのは、多くの人にとっていい息抜きになっているのだろう。ほんの数カ月前までは当たり前だと思っていたのに、現状ではできないことが(ゲーム内では)できるのだ」

キッセンもギャランティも、ゲーム内で同じ動きを繰り返したり、心が安まる活動をすることは、意識を現在に集中することで心を落ち着けストレスをコントロールするマインドフルネスと相通じるものがあると考えている。プレーヤーが目の前の活動に集中し、今ここにいる自分を実感できれば、呼吸や周囲の環境に意識を集中するのと似た効果が期待できるというのだ。

「マインドフルネスとは、自分が選んだ心のよりどころとなるものに意識を集中することにほかならない」とキッセンは言う。「皿を洗うことで意識を集中できる人がいれば呼吸でできる人もいる。意識を集中してゲームの中の世界に働き掛ければ、十分マインドフル的な経験となり得る」

リアルで多様な近隣住民

他人との接触を制限されることによる孤独感を癒やす効果も期待できる。このゲームでは、ゲーム内キャラクター(主に近隣住民)にはそれぞれ性格が付与されている。偉そうな者もいれば、親切だったり内気な者もいる。また、町には多様なキャラが暮らす上に住民の出入りが常にあるので新たな交流も生まれる。

もちろんキッセンもギャランティも、精神的な健康を保つ効果という点ではゲーム内キャラとの交流よりもリアルな人付き合いに軍配を上げる。一方でスコルニクに言わせれば、ゲーム内キャラがこれほどリアルに感じられるのには理由がある。

「ゲーム制作者はプレーヤーが感情移入しやすいキャラクターをつくろうと努めている。そのほうが強い感情を引き出せるからだ」とスコルニクは言う。「プレーヤーが自分の行為に罪悪感を持つような作りになっているゲームもある。そして、映画の観客にそうした感情を引き起こすのは非常に難しい。行為に参加できないからだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダと英国、貿易深化と防衛協力拡大で合意 作業部

ワールド

マクロン氏、プーチン氏のイスラエル・イラン危機仲介

ワールド

原油先物続伸し3%超上昇、イラン・イスラエルの攻撃

ビジネス

ECB、2%のインフレ目標は達成可能─ラガルド総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中