最新記事

韓国社会

韓国ドラマの中のセクシャルマイノリティー

2020年3月18日(水)21時10分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

newsweek_20200319_105324.jpg

ドラマ『梨泰院クラス』は人気ウェブ漫画をドラマ化した作品。トランスジェンダーのキャラクター、マ・ヒョンイ役を演じたイ・ジュヨンはインディーズ系の映画などで活動、今回の作品で一躍注目を集めた。

人気俳優パク・ソジュン最新作は性同一性や人種問題も

また人気俳優パク・ソジュンの最新作としてJTBCが放送、Netflixが全世界同時配信している『梨泰院クラス』では、主人公がオープンする居酒屋で料理を任されているコックがトランスジェンダーという設定だ。

世間の目を心配する店のマネージャーや同僚との確執や、後に表沙汰となり差別的な世間に打ち勝つ姿が描かれている。ちなみに、このドラマでは韓国とギニアのハーフの男性がアルバイト役として登場する。見た目は完全に外国人だが、本人は韓国人だと主張する彼は、その皮膚の色のせいで人種差別を受ける。このようにドラマでは様々なマイノリティーの人々の心情や、アイデンティティについてのエピソードが分かりやすく登場し、それが若者を中心に共感を得ているようだ。

これまでも、少数ながらセクシャルマイノリティーのキャラクターをドラマに登場させる試みは見られたが、まだ受け入れられない人々の声も聞かれた。例えば、SBSで2010年3月から11月まで63話放送されたドラマ『美しき人生』では、放送中止を求める団体の抗議活動行われ、それは放送終了後1年以上も続いたと言われている。

また、その翌年には10代から50代までの同性愛をテーマにしたドラマ『クラブBilitisの娘たち』がKBS 2TVで放送されると、放送終了後から苦情の電話やネットの書き込みが続き、その後ネットのオンデマンド放送欄から締め出されてしまった。

儒教や宗教の倫理観が強い韓国社会

どうしてこれまで韓国では、映画に比べドラマではあまりセクシャルマイノリティーの姿を描いてこなかったのだろうか?

まず、1つにはTVのレーティングの厳しさがある。TVは映画と違って誰でも簡単に見られてしまうため、不適切と思われるものは排除してきた。例えば、映画では喫煙シーンが映っていても問題ないが、地上波では喫煙する姿は放送できないため、その映画を放送する際には、たばこの部分にモザイクがかけられている。

さらに、韓国では今でも男子だけに徴兵制度があるため、十代後半から二十代にかけてはっきりと性別を認識する時期がやってくる。このとき、男か女か、2つの性にしっかりと線引きがされてしまうのだ。

そのうえ、儒教的倫理観が根強く、今でも保守的な考えをもつ人が多いのも確かだ。特に年功序列や教師を敬う考えは今も強い。さらに、韓国では多くのキリスト教会が存在するが、その中の一部の人たちは同性愛自体に嫌悪感をもち、激しく抗議している場合がある。

日本留学中の韓国人の友人は、日本のドラマ『俺のスカート、どこ行った?』は韓国では考えられない!と驚愕していた。このドラマの主人公は同性愛者で女装家の男性教師である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルおおむね下落、米景気懸念とFRB

ビジネス

ステーブルコイン普及で自然利子率低下、政策金利に下

ビジネス

米国株式市場=ナスダック下落、与野党協議進展の報で

ビジネス

政策不確実性が最大の懸念、中銀独立やデータ欠如にも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 7
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 8
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中