最新記事

アカデミー賞

アカデミー主演女優賞候補シンシア・エリヴォが語る、映画『ハリエット』のメッセージ

When Araminta Became Harriet

2020年1月17日(金)13時15分

エリボが演じた黒人女 性運動家はアメリカ史 を切り開く存在だった ILLUSTRATION BY BRITT SPENCER

<インタビュー:映画『ハリエット』で19世紀の奴隷・女性解放運動家を演じ、アカデミー賞の主演女優賞・歌曲賞にノミネートされたシンシア・エリヴォが語る作品に込められたメッセージ>

来月発表の第92回アカデミー賞で主演女優賞と歌曲賞にノミネートされた、女優で歌手のシンシア・エリヴォ。

トニー賞もエミー賞もグラミー賞も手にしたエリヴォが今回、オスカー候補となったのは、19世紀の奴隷・女性解放運動家ハリエット・タブマンの伝記映画『ハリエット』(日本公開予定は3月)でのパフォーマンスだ。今年のゴールデングローブ賞でも主演女優賞と主題歌賞の2部門でノミネートされていた(受賞は逃した)。

黒人奴隷の逃亡を支援した秘密組織「地下鉄道」の指導者の1人であるタブマンには、ミステリアスな印象も付きまとう。そんな彼女の人生に、エリヴォは新たな光を当てた。タブマンの出生時の名はアラミンタ・ロスだった。自由を手にした後に母親の名を受け継ぎ、ハリエットと名乗る。

エリヴォは有名ではなかった時期のタブマンのことをもっと知ってほしいと考えている。H・アラン・スコットが話を聞いた。


――ハリエット・タブマンの生まれたときの名を知ることが、なぜ重要だと思う?

「アラミンタ・ロス」を知ることで、彼女という人間の成長をたどることができる。アラミンタがある日突然、ハリエットになったわけではない。

――タブマンの人生が語られるとき、南北戦争に従軍したことと、女性参政権運動への貢献が往々にしてこぼれ落ちてしまう。これらの部分はなぜ重要なのか。

彼女が軍にいたことや、女性参政権運動に参加していたことを知る人は少ない。初めて武装襲撃を行った黒人女性の1人であり、指揮官だったなんて最高にエキサイティング。長く語り継がれるべき人生の物語がそこにある。

――作品中の音楽は演技に影響を与えた?

もちろん。音楽は魂につながる。黒人霊歌はメッセージを伝え合う方法だった。

――タブマンの物語からくみ取ってほしいメッセージは?

タブマンのように行動力があり、素晴らしい心を持つ女性が自らの物語を紡ぐ姿を見て、若い人たちに勇気と自信を持ってほしい。女性には何でもできるという例が彼女だから。この映画は、私たちの持つ強さを見つめ直すきっかけにするべきだと思う。

<本誌2020年1月21日号掲載>

20200121issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月21日号(1月15日発売)は「米イラン危機:戦争は起きるのか」特集。ソレイマニ司令官殺害で極限まで高まった米・イランの緊張。武力衝突に拡大する可能性はあるのか? 次の展開を読む。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中