最新記事

インタビュー

米誌が選ぶ東京新名所「チームラボ ボーダレス」の仕掛け人・杉山央とは何者か

2019年10月11日(金)16時40分
Torus(トーラス)by ABEJA

torus191011teamlab-5.jpg

不便さが、ワクワクを生み出す

「チームラボ ボーダレス」は、ここに来ないと経験することができない価値を、どうやって提供するかを考え抜いてつくり上げたミュージアムだ、と杉山さんは言う。

作品ごとの境界はなく、広大な迷路をさまようような感覚。最先端のデジタルテクノロジーによって入場者の動きなどに反応し、人が触れると花が散ったり、水の流れが変わったりする。散った花や鳥などがほかの作品に移動し、新たな動きにつながっていく。

杉山)「チームラボ ボーダレス」の構想は、開催の3年ほど前からチームラボのメンバーと、話し合ってきました。

生活の中にアートや文化があることで、生活がより豊かになる。それが森ビルの考えです。だから六本木ヒルズに森美術館、アークヒルズにサントリーホールと、街づくりにアートを取り込んできた。そのなかで世界中の人を惹きつける文化施設を東京につくるべきだという流れにつながった。

一方、チームラボにも東京に拠点をつくりたいという思いがあった。その点で、森ビルとチームラボの想いが重なった。僕自身も、若いころからつながってきた猪子さんと、いつか一緒になにかをしたいと、ずっと思ってきました。

ここに来ないと体験できないような突き抜けたものを東京に作って、世界中の人々を惹きつけよう。デジタルアートを体験してもらうことで、物質的ではないものに対する価値を生み出したい。僕も彼らも、この思いは根底で通じ合っていました。

torus191011teamlab-6.jpg

杉山)僕自身、森ビルでイベントや展覧会を企画するうち、展覧会や美術館のあり方を深く考えるようになっていました。

展覧会で見る絵と、ネットで見る絵が同じになってしまう時代です。単に「知る」だけなら一緒ですよね。でも、だからこそ「モナリザ」のような絵は相対的に「本物」の価値が高まる。

だけど、2次元のデジタルのアートやコンテンツに、物質的な「本物」は存在しません。どこにいてもスマートフォンなどで見ることができてしまう。そういうものを見るためにわざわざ出かける価値は、なくなってきている。逆に言えば、平面的でなく立体で複雑な空間の中に入れるもの、シークエンス(連続性)が無いものーーつまりライブ性があるものであれば、わざわざその場所に来る価値は高まるのではないか、と。

「チームラボ ボーダレス」は、そういったことを徹底的に考えた上ですべて設計されています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、利下げは慎重に進める必要 中立金利に接近=

ワールド

フィリピン成長率、第3四半期+4.0%で4年半ぶり

ビジネス

ECB担保評価、気候リスクでの格下げはまれ=ブログ

ワールド

ジャカルタのモスクで爆発、数十人負傷 容疑者は17
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中