最新記事

インタビュー

米誌が選ぶ東京新名所「チームラボ ボーダレス」の仕掛け人・杉山央とは何者か

2019年10月11日(金)16時40分
Torus(トーラス)by ABEJA

Torus 写真:西田香織

8月下旬に公表された、米TIME誌のThe World's 100 Greatest Places of 2019。メキシコやセネガル、アイスランドなど各地の観光地とともに、日本のある美術館が選ばれた。

東京・お台場の「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」

アートコレクティブ・チームラボと、ディベロッパー・森ビルが手を組み生まれたミュージアムは、開設から1年で日本のインバウンドを象徴する名所になった。230万人が訪れ、その半数が海外からの観光客だ。

その仕掛け人が、杉山央さん。
表現することをためらった子ども時代を経て、街を使って遊ぶようなアートを仲間と仕掛けていくワクワクを知った。

変わらない志で、東京の新名所を生み出すまでの歩みとは。

◇ ◇ ◇

ゲームの世界なら、自由になれた

杉山)家族やその周りに芸術家がたくさんいる環境で育ちました。父方の祖父が日本画家の杉山寧、母方の祖父は建築家の谷口吉郎。作家の三島由紀夫は伯父でした。

子供の頃の遊び場は、祖父が日本画を描くための画室でした。体育館並みの広さがあって、大きな絵を上げ下げするエレベーターから写真を現像する暗室や動物のはく製まで、何でもありました。巨大な絵を描く時に使う、座ったまま移動する機械制御の椅子が面白くてずっと遊んでいたのを覚えています。

祖父とは一緒に絵も描いたこともあります。僕のカブトムシの絵の横に、祖父が下書きなしでカマキリとアゲハチョウをサラサラと描く。それが、びっくりするほど美しかった。構図から何から迷いなく、ピタリと答えに行き着いていた。この絵は宝物として今も持っています。

絵の上手さって実物を忠実に表現するだけじゃない。実物よりも美しく表現することなんだ。それが芸術というものなんだ、と子供のころから思っていました。

torus191011teamlab-2.jpg

杉山)そんな圧倒的な才能が近くにいたことで、僕自身、萎縮していたところがあります。何かを作ったり表現したりするのは恥ずかしいとすら思っていました。

図画工作の授業でも「杉山くんのおじいさんは有名な画家でね」となって「どれどれ杉山くんの絵を見てみようか」となる。

恵まれすぎた家庭環境といえばいいのか、何でも決めてくれる親と、面倒見のいい姉もいて。自分で何か意思決定できる機会はほぼなかった。

格好悪い話なんですが、のびのびと自由に過ごせたのはゲームの世界だけでした。朝から晩までファミコンやパソコンゲームばかりしていた。作文にも「将来はドラゴンクエストを作る人になりたい」と書いてましたし。

本当に自分がやりたいことってなんだろうと、ずっと探し求めていました。身体が小さかったし運動が得意だったわけでもない。ただ、他人がやってないような新しいアイデアはよく思いついてほめてもらえた。そんな体験は、徐々に積みあがってはいました。

けれど、一人だと自信もないし、決心もつかない。どうすればいいかも分からなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米小売業の求人、10月は前年比16%減 年末商戦の

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模

ビジネス

米NEC委員長「経済対策に向け議会と協力」、財政調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中