最新記事

パックンのお笑い国際情勢入門

「下ネタは世界共通。男たちは同じオチで、同じ顔で笑う」早坂隆×パックン

2019年8月9日(金)19時50分
ニューズウィーク日本版編集部

パックン でもこれって、どうですか、日本ではちょっと行き過ぎかもしれない? どうなんですか。もう少しかわいらしい下ネタじゃないと。

早坂 テレビじゃできないですよね。

パックン じゃあ、1つ言っていいですか。

男が砂漠で迷って、死にそうになったときにオアシスを見つける。こういう設定も結構ありますが、ご存じですか。

オアシスには水と果物があって、なんとか食いつなげる。砂漠に出ていくのも怖いし、誰も来ないから、3カ月、4カ月、1年暮らして、男は寂しくなってくる。誰もいないから、1人でも十分ヤッていたけれど、ひとつラクダとヤッてみるかと男は考える。でもラクダは全然協力してくれない。動き回って、全然ヤラせてくれない。

それで男が「うーん」と思っていると、ある日突然、同じように砂漠で迷ってオアシスにたどり着いた美女がいる。男は水と果物をあげて、美女はなんとか命を取り留める。看病して元気になった彼女が「私にとって命の恩人です。恩返しにできることはありますか?」と聞いたら、男は「本当に? じゃあ悪いけど、1つだけお願いしていい? あのラクダを押さえててくれますか?」。

早坂 僕ね、それをヨルダンで聞いて、設定が米軍兵士になってましたよ。確かイラクの砂漠だったかな。

パックン なるほどね。アメリカ人をバカにする設定も足されている。

早坂 中東の反米的な意識も土壌にあって、すーんごいウケてました。

「今の日本で体制を笑うジョークがウケないのは、理由がある」

パックン 素晴らしい。じゃあ、下ネタは万国共通。

それ以外だと、例えば宗教ジョークとかはどうですか。イスラム教徒とかは?

早坂 ありますよ、宗教ジョーク。イスラムの人も宗教ジョークを言うし、好きですね。

アラビア人の学生が大学受験をする。1問だけ、どうしても分からない問題があった。彼は困って、「答えはアラーのみぞ知る」と書いた。後日、合否の発表の手紙が届いた。見てみると「アラーは合格したが、あなたは不合格」。

パックン うまいねぇ。

早坂 僕はイラクに2002年、サダム・フセインの独裁体制だったころに行った。イラク戦争が03年だから、その前年に。その時はヨルダンから陸路で入ったが、国境からずっと役人が左右について自由に動けない。町の人たちも自由に政治的なことを言えるような国ではなかったけれど、それでも移動の車の中で、僕が「フセインのこと、どう思ってるの?」と聞くと、イラク人の役人が「いや、好きだよ」「本当に?」「100%好きだよ。いや、1000%」「本当はどうなの?」......「マイナス!」って言うんですよ。

パックン それ、日本だったら「100点!――1万点中で」とかいうやつ。

早坂 独裁国家だと体制からの圧力が強いので、体制を笑うジョークが出てくる。今の日本で体制を笑うジョークがあまりウケないのは、理由がある。安倍さんに不満がある人はいっぱいいる。多くの人はベストだと思っていなくて、消去法でベターという人が多いと思う。ただ、笑いは圧力や不満に対して生じるものだとすると、今の日本人では、安倍さんや自民党よりも、だらしない野党だったり官僚だったり――最近は「上級国民」なんて言葉も出てきているが――そういう人たちを笑いたいというネタのほうがSNSを見ていると多い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米首都近郊で起きた1月の空中衝突事故、連邦政府が責

ワールド

南アCPI、11月は前年比+3.5%に鈍化 来年の

ワールド

トランプ氏、国民向け演説で実績強調 支持率低迷の中

ワールド

ドイツ予算委、500億ユーロ超の防衛契約承認 過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中