最新記事

日本

日本の神様の名前は、なぜ漢字なのか、どんな意味があるのか

2019年6月19日(水)12時19分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

『漢字で読み解く日本の神様』より

<上の漢字、もしフリガナがなかったら読めるだろうか? 名前に秘められた謎を解き明かせば、日本古来の神様たちについて、もっと深く知ることができる>

2019年4月1日、日本中が2つの漢字に沸いた。「令和」だ。その日から至る所でこの2文字を目にするようになり、あまり目立たない存在だった「令」という漢字が一躍、脚光を浴びることになった。言葉の出典についても話題になったが、いずれにせよ、どちらの漢字も日本生まれではない。

固有の文字を持たなかった日本は、中国から入ってきた漢字をうまく利用することで、日本語を書くための方法を考え出した。そのおかげで貴重な記録として残されたのが、各地の伝承をまとめた「風土記」や、それを整理した『古事記』『日本書紀』などだ。

これらの文献には、多くの神が登場する。だが、ギリシャ神話の神々の名前は知っていても、日本の神様の名前は、残念ながら、あまり知らない人のほうが多いのではないだろうか。

その理由のひとつは「漢字が難しい」「読み方が分からない」からかもしれない。全ての神様の名前は漢字で表され、なかには「波邇夜須毘古神」のように当てずっぽうでも読めそうにない名前の神様もいるが、実はこうした名前にこそ、その神様の本当の姿が隠されているのだという。

名前に秘められた謎を解き明かせば、日本古来の神様たちについてもっと深く知ることができる。漢字を通して、神様たちの意外な素顔をのぞいてみよう──というのが、『漢字で読み解く日本の神様』(山口謠司・著、CCCメディアハウス)だ。「開運・厄除けの神様」「縁結び・子宝の神様」など、ご利益別に全75柱の神様について解説した本書には、それぞれが祀られた神社の情報も載っている。

「音」と「意味」で漢字を日本語に

本書の解説によれば、古代の日本には、縄文時代から各地方を治める部族がいたとされるが、それぞれの部族には、自分たちの出自を神格化した祖先神がいた。また、生活と切り離せない自然のさまざまな現象を、人々は神として崇めてきた。

当然それらの神様には名前があったが、文字を持たなかったため、長い間、音だけで伝えられてきた。奈良時代に入り、中央からの官命によって書物(風土記、古事記など)に記されるにあたって、それぞれの名前に文字(漢字)を当てることになった。

日本語を書き表す文字として漢字を利用するには、2つの方法が用いられた。ひとつは、「ア」という音に同じような発音をする「阿」「亜」「安」などを当てる方法で、もうひとつは、「たべる」「のむ」「はしる」といった日本語に、同じ意味を持つ漢字「食」「飲」「走」を当てる方法だ。

この2つの方法をうまく活用することで、神様たちの名前が、ついに文字になったのだという。したがって、神様の名前に使われている漢字は、ただ読み方を表すものではなく、どんな神様なのかを広く、また後世にも伝えるために選び抜かれたものと言えるだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

印首都の車爆発、当局がテロとの関連含め捜査中 少な

ワールド

焦点:英BBC、「偏向報道」巡るトップ辞任で信頼性

ビジネス

街角景気10月現状判断DIは2.0ポイント上昇の4

ワールド

タイ、カンボジアとの停戦合意履行を停止へ 国防相が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 7
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中