最新記事

映画

フィルムノワールから生まれた、実写版ポケモンの古くて新しい世界

Bringing Pocket Monsters to Life

2019年5月23日(木)17時00分
モ・モズチ

ピカチュウはポケモンが狂暴化するという異様な事件の謎を追う Courtesy of Warner Bros. Pictures

<老若男女に愛されるピカチュウが初の実写版でハリウッドに進出――新しい相棒と繰り広げる冒険の行方>

96年のデビュー以来、「ポケットモンスター」は子供たちの心と財布をがっちり握っている。

今や900億ドル規模のグローバル帝国に成長し、「スター・ウォーズ」も超える世界で最もカネになるメディア資産だ。そして今回、初の実写版映画が誕生した。同名のゲームを原作とする『名探偵ピカチュウ』が日米で公開されている。

ポケモンは、任天堂の携帯ゲーム機ゲームボーイ用のゲームとして登場した。さまざまな種類のポケモンを捕まえ、鍛えて、ほかのプレーヤーが持っているポケモンと戦わせる。

最初は日本語版のゲームソフトだけだったが、トレーディングカードゲームや漫画、テレビアニメなどを次々に展開。98年にアメリカへ、さらには世界へと進出した。

現在までにゲーム78本、アニメ映画18本、大量のトレーディングカードのほか、玩具や帽子、Tシャツ、リュックサックなど数え切れないほどのグッズが世界中で愛されている。

成功の秘訣はどこにあるのか。『名探偵ピカチュウ』のロブ・レターマン監督は次のように語る。「願いはかなうという充実感がある。外の世界に飛び出して、自分に自信と力を与えてくれるものを集める、自分にもできる、そこに喜びを感じるんだ。大人抜きで、友達と素晴らしい冒険に繰り出す」

『名探偵ピカチュウ』のゲーム版は、従来のシリーズとは少々違う。開放的な空間で楽しむロールプレーイングゲームというより、筋書きに沿った謎解きの冒険の旅だ。

ピカチュウの相棒はティム・グッドマン(ジャスティス・スミス)。探偵である父ハリーが、ポケモンが凶暴化するという異様な事件を追跡中に行方不明となったため、ピカチュウと共に捜しに出掛ける。2人の間には特別な絆が生まれる。「ピカピカ」としゃべるピカチュウの言葉が、ティムだけには人間の言葉に聞こえて会話ができるのだ。

フィルムノワールの薫り

「ゲーム版は、小さな黄色いふわふわとしたキャラクターから大きな人間像を引き出していた」と、レターマンは言う。そこでピカチュウの声として起用したのが、『デッドプール』の自虐的で口の悪いスーパーヒーロー役などで知られるライアン・レイノルズだ。

レイノルズに出演を打診する前に、彼が出演したコメディー映画『チェンジアップ』の音声をピカチュウのアニメに合わせた映像を作成した。「それを見た瞬間に、決まりだと思った」と、レターマンは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、領土交換の可能性示唆 ドンバス全域の確

ビジネス

トヨタ、2026年の世界生産1000万台超を計画 

ビジネス

中国、25年の鉱工業生産を5.9%増と予想=国営テ

ワールド

日銀幹部の出張・講演予定 田村委員が26年2月に横
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中