最新記事

映画

ラシダ・ジョーンズが語る恋と友情と元カレ

主演&脚本作『セレステ∞ジェシー』には彼女と元カレの経験がたっぷり詰め込まれている

2013年5月14日(火)18時30分
大橋 希

自分らしく 表情豊かなジョーンズの演技に引きつけられる 撮影:Okamura Masahiro(CROSSOVER Inc.)
ヘア&メイク:Mariko Kubo

 別れた相手と友達でいられるか? 相手に恋人ができたら? ヨリが戻る可能性は?――きっと誰もが経験したことのある恋愛の難問をテーマにした映画『セレステ∞ジェシー』(リー・トランド・クリーガー監督)が5月25日に日本公開される。

主人公は学生時代からの付き合いで、最高に気の合うセレステとジェシー。離婚を前提に別居中だが、しょっちゅう会っては一緒に出掛けたり、食事をしたりしている。しかしある出来事が起きて、2人は遠ざかっていき......。ちょっと笑えて、共感を覚えるストーリーが多くの支持を集め、アメリカではわずか4館の限定公開から586館の拡大公開を実現した。

ウィル・マコーマックと共同で脚本を手掛け、セレステ役を務めたのが女優、モデル、ミュージシャンと幅広い活躍をみせるラシダ・ジョーンズだ(米音楽プロデューサーのクインシー・ジョーンズを父親に持ち、ハーバード大学卒という経歴も目を引く)。

自分で選んだ道なのに、いざ相手が予想外の行動を取ると焦りと未練で爆発しそうになるセレステ。矛盾に満ちて、強いのか弱いのか分からないキャラクターだが、そこにはジョーンズの「疑問」が投影されている。

「ロマンチックコメディが好きなんだけど、気になるのは『キャリアは上手くいっていて、男がいないことが欠点』という女性の描かれ方が多いこと」と、ジョーンズは言う。「仕事での成功が恋を邪魔しているわけじゃなくて、実際は本人に欠点があるから恋人がいない。でもそこを描いていないの。だからセレステは『なんなのこの女』って見た人が思うようなキャラクターにしたかった。それに映画の別れのシーンって美しいけど、実生活では誰かと別れた時にはメイクもファッションもボロボロになるし、スナック菓子のドカ食いとかしちゃうでしょ? そのリアルな感じを出したかった」

下品すぎず、2人の関係性がよく分かるシーン

その感じは、セレステとジェシー(人気コメディアンのアンディ・サンバーグが好演)がリップクリームやベビーコーンを使ってふざける場面にも生きている。笑えることは笑えるが、こんなに開けっぴろげな下ネタをやるか? と思う人もいるかもしれない。でも、ジョーンズにとってはそれがリアルな人間関係だ。「ウィル(・マコーマック)とファーマーズマーケットに行った時によくふざけてやっていたの(笑)。下品すぎず、2人の関係性がよく分かるやり取りだと思ったから脚本に盛り込んだ。下ネタが言いにくい相手は、友達になれないか、恋心がある人なんじゃない? 友達ならそういう感覚もシェアできないとね」

男女の友情は成り立つか、という問いには、ジョーンズは「もちろん! 親友になれる」と即答。実は脚本を書いたマコーマックとはかつて3週間だけ恋人だった仲。付き合ってすぐに友達関係の方がいいと互いに悟り、別れたが、その後も親友として付き合っている。「この脚本を描いたのは、私もウィルも恋愛にとても興味があったから。いろいろ経験して分かったこともあるけど、やっぱり分からないことも多い。私たちがこの10年間で経験してきたものすべてをこの脚本に注ぎ込んだ」と、ジョーンズは言う。

 恋愛ドラマは主人公たちにどのくらい感情移入できるかで鑑賞感が左右されがち。その点、『セレステ∞ジェシー』はただの恋人でなく、夫婦の設定にしているためちょっとハードルが高い......ように思えるが、実際はそうでもない。ジョーンズが描き出すリアルな人生とほろ苦い現実に共感を覚える人はきっと多いはず。サントラ(特にリリー・アレンの「Littlest Things」)もお勧めだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

国内企業物価、11月は前年比2.7%上昇 農林水産

ビジネス

BMW、次期CEOに生産部門トップ 新世代EV開発

ワールド

ハンガリー、米国と新たな金融協力協議開始へ=外務貿

ワールド

ポーランド初の原発建設に国庫補助、EUが承認 36
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中