最新記事

映画

『アバター』は『タイタニック』を超える!

ジェームズ・キャメロン監督の3D超大作が、興行収入記録を塗り替えるのも目前。その6つの理由は——

2010年1月8日(金)14時29分
セーラ・ボール(エンターテインメント担当)

『タイタニック』が3カ月で達成した興行収入10億ドルを『アバター』は17日間で突破 ©2009 Twentieth Century Fox

 ジェームズ・キャメロン監督の新作『アバター』がアメリカをはじめ世界各国で封切られてから3週間が過ぎたが、その勢いは留まるところを知らない。既に全世界で数十億ドルの収益を上げ、現在も数字を更新中。映画史上第2位となる興行収入を達成することは確実だ。

 では、同じくキャメロンが手掛けた『タイタニック』の興行成績第1位の記録を破ることはできるのだろうか? 予想はいつだって難しいものだし、キャメロンの最新作ということもあって、評論家は『アバター』の今後を述べることには慎重になっているが......。

 まず、実際のチケット販売数で『タイタニック』を上回ることはないだろう。しかし休暇シーズンの今の勢いを維持できれば、全世界で史上最高の興行収入(物価変動による誤差は考慮しない)を目指すことは十分可能だ。地球からはるか彼方の世界を舞台にしたアドベンチャー大作が、歴代トップの座に就けそうなのは次の6つの理由から。

1.最大の難関は既に突破した。

 映画『ダークナイト』は、全世界で興行収入10億ドルを達成するのに7カ月かかった。『タイタニック』は3カ月近く。『アバター』はこれを17日という猛スピードで達成した。

 映画のDVDリリース化という市場の圧力があるなかでは、もはや7カ月、8カ月も劇場上映を続けることはできない。『タイタニック』がそうだった。だが『アバター』にそれほどの長期間は必要ない。難関は既に突破しており、『タイタニック』の記録を破るまでたったの(たった!)8億ドルちょっとだ。

2.ライバル作品がない。 

 これまで、1月公開の映画といえばその年の「クズ」作品ばかりだったが、今年もそれは変わらないようだ。昨年12月には『アルビン/歌うシマリス3兄弟』の続編や『シャーロック・ホームズ』などが高い収入を上げている。しかし1月公開のメジャー作品は一週末に平均3作と少なく、前評判が高いものはデンゼル・ワシントン主演の『ザ・ブック・オブ・エリ』だけだ。

 1月公開作品の低迷振りを味方につけたのが『タイタニック』だった。97年末の休暇シーズンに好成績を上げ、その勢いで収益の大部分を98年に稼いだ。『アバター』もこの時期的チャンスにのっているなら「歴代1位の座を奪うのは案外簡単だろう」と、興行収入調査サイト、ボックスオフィス・モジョのブランドン・グレイ社長は言う。「必見映画」という前評判を獲得しているし、「この時点で観に行こうと思っている人は、他に話題作があっても必ず観に行く」からだ。

 『アバター』にとって最大の脅威は、同じく3Dを駆使した大作『アリス・イン・ワンダーランド』が3月に全米公開されるとき、3D上映劇場を譲らなければならないことだろう。

3.「目新しさ」の売り込みが成功した。

 『アバター』を観たいなら、絶対に映画館で観るべきだ----見事な興行成績は、そんな口コミのおかげだろう。

 配給元の20世紀フォックスは『アバター』を「一大映画イベント」に仕立てあげ、作品が醸し出す荘厳さや映像の素晴らしさを強調することでファンタジー映画やSF映画に飽き飽きした人々の興味をそそった。オンラインでDVDレンタルができる今の時代に、先手を打ったかっこうだ。

「自宅でも同じ体験ができる、と人々に思ってもらうのはとても難しい」と話すのは、映画情報サイト、ボックスオフィスプロフェッツのアナリスト、デービッド・マムパワー。「『アバター』は過剰なまでに期待されながら、その期待に応えた。おかげで、突然みんなが観に行きたくなるという、信じがたい成功を収めた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン核施設への新たな攻撃を懸念=ロシア外務省報道

ワールド

USスチール、米国人取締役3人指名 米軍・防衛企業

ワールド

イスラエル閣僚、「ガザ併合」示唆 ハマスへの圧力強

ワールド

中国外相、米との関与拡大呼びかけ 対立に警鐘
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    13歳も72歳も「スマホで人生が終わる」...オンライン…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中