最新記事

株の基礎知識

日本で個人投資家が増えないのは「単元株制度」のせい

2022年9月29日(木)19時15分
山下耕太郎 ※かぶまどより転載

PonyWang-iStock.

<日本の個人金融資産が2000兆円を超えたものの、そのほとんどは現金・預金。なぜ、いつまでも株式投資が浸透しないのか>

個人金融資産2000兆円時代

日本銀行が2022年3月に発表した2021年10〜12月期の「資金循環統計(速報)」によると、2021年12月末時点の家計金融資産(個人金融資産)は2015兆円となり、初めて2000兆円の大台を突破しました。そして、6月に発表された2022年3月末でも2005兆円となっています。

kabumado20220929tangenkabu-chart1.png

金融資産が初めて1000兆円に達したのは1990年。そこから30年あまりで倍増したことになります。賃金がほぼ横ばいのなか、将来への不安から消費を抑え、貯蓄に回す傾向が強くなったことが原因です。また、高齢化の進展によって、50代以上の預金を持つ人が増えているのです。

ただ、家計資産の半分以上を占めているのは「現金・預金」です。3月末時点の残高で、現金・預金は1088兆円。全体の54%を占めています。しかもこれは、過去30年間の上限値(48~55%)に近くなっています。

kabumado20220929tangenkabu-chart2.png

それに対して、「投資信託」「株式等」をあわせても約15%で横ばい。国民資産全体から見ると、貯蓄から投資への流れはほとんど進んでいないことがわかります。

アメリカの個人金融資産は114兆ドル(約1京2900兆円)で、その半分以上を株式と投資信託が占め、株価上昇が国民の資産と消費を押し上げています。日本の個人金融資産は約30年で2倍になりましたが、アメリカは6.7倍に膨らみました。

■個人株主の比率が半減

日本では個人株主の比率が低下しています。東京証券取引所などが7月に発表した「2021年度株主分布状況調査」によると、個人が保有する株式の割合は金額ベースで16.6%と、この50年間で半減しました。

kabumado20220929tangenkabu-chart3.png

戦後、財閥や政府が保有する株式を個人が保有することを推奨する「証券民主化運動」が起こり、1970年代には個人株主の持ち株比率が40%近くに達しました。

しかしその後、企業は外資から経営権を守るため、銀行などとの株式持ち合いを加速。バブル崩壊とともに日本企業の成長期待も崩れ、2011年度以降、個人株主比率は徐々に低下し、最近は20%を割り込んでいるのです。

■若年層中心に投資への関心が高まる

ただ、若年層を中心に投資への関心は高まっています。楽天証券は2022年に証券総合口座数が800万口座を突破しましたが、新規口座の開設では、30代以下が6割強を占めています。

「給与が上がらない」など将来への不安が高まり、積立でコツコツ投資する需要が伸びているのです。

そうは言っても、株式投資に対するハードルはまだ高いようです。日本証券業協会の「証券投資に関する全国調査(2021年度)」によると、株式を購入しない理由として「株式投資するほどの資金がなかった」が24.6%で2番目になっています。

kabumado20220929tangenkabu-chart4.png

(参考記事)「人気のある会社への投資」はなぜ失敗するのか? 儲かる株を見抜くポイントと意外な買い時

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中