最新記事

株の基礎知識

株式市場にもブーム到来、サブスク銘柄は本当に儲かるのか?

2022年7月18日(月)13時30分
石津大希 ※かぶまどより転載

■収益安定業種から勝者を見極めるポイント

では、サブスクを含め、収益が安定している業態ならばどんな企業でも株価は上がりやすいのかというと、もちろんそうではない。

足元でサブスク企業が堅調な値動きを見せている背景には、ビジネスモデルに安定性があるほか、成長テーマとして顧客数が大きく拡大していることも関係している。市場規模が急拡大しているということだ。「安定感+成長性」という構図により、株価が上昇しやすくなっているのである。

ただ、成長市場なだけに、業界内での競争は厳しい。機能としては似たようなサービスであるものの、細部の品質の違いで勝者と敗者が決まるような競争が展開されている。また、継続的なサービスという性質上、顧客を競合他社から奪うことも容易ではない。

これにより、勝者は安定的・継続的に多額の収益を上げられる一方、敗者は低収益のまま、悪い意味で安定的に事業を続けることになる。

すなわち、単に「収益安定業種だから」という理由だけでは買い材料とはなり得ず、「市場は拡大しているか?」「業界内で競争に勝っているか?」の2点を見定めようとする姿勢が重要となってくる。

市場の拡大については、例えば電気・ガスの市場規模は横ばいのため、それら企業への投資で高いリターンを得るのは難しいかもしれない。また競争については、例えば月次契約数などのIR情報を見比べて、競争環境においてどのようなポジションにいるのかをチェックすることも有効だろう。

そのサブスク銘柄は本当に安定的か?

一顧客当たりから得る収益が安定的・継続的なサブスク。確かにそれは、投資家にとっては業績予想の組み立てにおいてプラスに働くものの、足元では厳しい競争が繰り広げられ、多くのサブスク企業は広告宣伝費を投下することでまずは売上高を伸ばす(顧客数を増やす)という戦略を採っている。

つまり、ビジネスモデル自体には本質的に安定性・継続性があるものの、市場環境・事業環境を背景にそうした戦略が採られた結果、会社全体の収益で見れば安定性がない、というケースも少なくない。

具体的には、広告宣伝費が利益を押し下げる一方、顧客数が増えて売上高は不安定的に伸びるという事態も、実際に多く起こっている。サブスク関連銘柄を見るうえでは、このような状況を理解し、通常以上に市場規模の推移や競争状況の確認に気を配らなければならないと考える。

いずれにしても、〝何となく〟の空気感で買っているのだとすれば、いま一度、サブスク銘柄について見直してみたほうがいいかもしれない。

(参考記事)水素関連株は買い? 投資テーマとしての可能性と注意点を考える

※本記事は再掲載です(初出:2020年7月15日)

[執筆者]
石津大希(いしづ・だいき)
外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤務したのち独立。ファンダメンタルズ分析の経験を生かして、客観的データや事実に基づく内容を積極的に発信。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することを心がける。

※当記事は「かぶまど」の提供記事です
kabumado_newlogo200-2021.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルがイランに先制攻撃、核施設など100カ所

ビジネス

トヨタ株主総会、豊田会長の再任賛成96.72% 昨

ワールド

印機墜落、地上の学生寮で24人死亡か ブラックボッ

ワールド

中国、在イスラエル・イランの国民に警戒呼びかけ 情
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中