最新記事

株の基礎知識

東証1部が「なくなる」──市場再編で何が変わるか、企業・マーケットの動きが活発になってきた

2021年7月20日(火)06時55分
佐々木達也 ※株の窓口より転載
東京証券取引所

winhorse-iStock.

<東証1部上場企業の約3割が新たな最上位市場であるプライム市場に該当しない、という報道も出ている。2022年4月に予定される東証の市場再編とは何なのか。その狙い、3つの新市場の特徴、今後の動きは>

そもそも東証の市場再編とは

2020年初頭、東京証券取引所は「上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支え、国内外の多様な投資者からより高い支持を得られる魅力的な株式市場を提供することにより、豊かな社会の実現に貢献」するためとして、市場区分を再編すると発表しました。

(参照)新市場区分への移行に向けて _ 日本取引所グループ

現在の東証は、流動性が高く時価総額も比較的大型の株式のための市場第一部(東証1部)、実績のある企業や新興企業向けのマザーズ、ジャスダック(スタンダード、グロース)、それに市場第二部(東証2部)の大きく分けて4つの市場区分になっています。

2022年4月からは、この市場区分がプライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つに再編されます。

kabumado20210719saihen-2.png

■プライム市場

プライム市場は、従来の東証1部の中でも流動性の高い大型企業向けの市場です。東証を有する日本取引所グループ(JPX)では「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、(中略)持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向け」としています。

上場のための基準は様々ですが、今回の市場再編でポイントとなるのは、株式取引の円滑な流通や公正な価格形成を目的として、これまでよりも流通株式比率が重要視されている点です。具体的には、プライム市場に上場するためには35%以上の流通株式比率が必要になります。

流通株式比率とは、市場で取引されている流動性のある株式の比率を差し、全上場株式数から「上場株の10%以上を保有する大株主」「自社株」「役員などの持ち株」を引いた株式の割合です。

例えば、日本企業でこれまで慣習的に行われてきた持ち合い株などの政策保有株も流通株式から除外されます。このほかに、株主数800人、流通株式の時価総額100億円以上、最近2年間の利益合計が25億円以上または売上高が100億円以上、かつ時価総額1000億円以上などの基準が設定されています。

kabumado20210719saihen-3.png

■スタンダード市場

スタンダード市場は、プライム市場の基準は満たさないものの、「公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備え」た企業のための市場です。従来の東証1部や東証2部の中小型株や大型の新興株などが対象となります。

上場基準は、例えば流通株式比率が25%以上、株主数は400人以上、流通株式時価総額は10億円以上と設定されています。

kabumado20210719saihen-4.png

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

イタリア鉱工業生産、5月は前月比0.7%減に反転 

ワールド

親パレスチナ活動の学生、移民当局の拘束巡り米政権に

ワールド

トランプ氏、アフリカ5カ国に強制送還移民受け入れを

ワールド

トランプ氏、大統領権限でウクライナに武器供与する意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中