最新記事

自己啓発

1カ月でTOEIC 900点、1年で馬術日本一、2作目で小説家デビューした女性の最強時短スキル

2021年5月21日(金)12時05分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)

小説新人賞を短期間で取れたのはなぜか

一方、習い事の上達や文学賞への応募などに役立つのは、パフォーマンス用の時短スキルだ。パフォーマンス用では、「情報収集力」が重要になる。

私は2019年11月に「職業作家になる」と決意した。

新聞記者やフリーの科学ライターの経験はあるものの、小説は短編も含めて書いたことはなかった。ただ、本はジャンルを問わずによく読んでいたし、「この内容を書くならば、原稿用紙何枚になる」という分量の感覚が身についていたのは強みだった。

書きだす前に1カ月間かけて、小説執筆の指南本を20冊ほど読んだ。自分がノウハウを身につけて真似するためではない。ライバルがどのように書くのかを学び、一歩先を行くためだ。同様に、さまざまな新人賞の講評も熟読した。

目標設定は「1年で長編小説の新人賞を受賞し、単行本を出版する」とした。当時携わっていた、責任を持って進めなくてはいけない職場のプロジェクトの区切りまで、2年強だったからだ。1年で作家デビューをして、残り1年で引き継ぎをしつつ専業作家になる準備をするためだ。

「己を知り、目標設定をする」は整った。あとは応募用の原稿を書くだけだ。

とはいえ、これが初の小説執筆だ。自分がどれくらいの期間で1篇の長編を書けるのかは見当もつかなかった。

1作目は時代物のミステリを書いた。場面ごとの枚数などを詳細に決めた構成メモ(プロット)を作った後、毎日、15枚から20枚で区切りのつく場面まで書くことを心掛けて、400字詰め原稿用紙で522枚を2カ月弱で書いた。

初めての小説は、2020年1月末が締切の新人賞に応募した。

分量・スピードの感覚がつかめたので、「2カ月に1本の長編を書き、6回のチャンス内で新人賞を受賞する」と目標を再設定して2作目の執筆にとりかかった。

それが後に、第24回日本ミステリー文学大賞新人賞(日ミス)を受賞し、私のデビュー作となった『馬疫』(受賞時のタイトルは『オリンピックに駿馬は狂騒(くる)う』)だった。

執筆前に改めて各種新人賞の講評を読むと、直木賞作家の朱川湊人先生が「新人賞に期待されるのは、何よりも"突破力"」と語っていた。突破力とは、新鮮なテーマ、定石破りの展開などだ。

ならば、自分にとって突破力になるのは「馬をテーマとした、理系ミステリと社会ミステリの融合」だと考えた。

私は、馬術選手で馬の獣医師もしていた。競馬業界と共同研究をしたこともある。生まれたばかりの馬、競技や競馬で活躍する馬、緊急手術の甲斐なく死ぬ馬など、さまざまな状況の馬を間近で見てきた。

それぞれの状況の馬の匂いや鳴き声、感触や体温も生々しく知っているから、物語のリアリティを生む描写にも自信があった。

『馬疫』は現代物だったこともあって、原稿用紙583枚を1カ月半で書けた。しかし、いざ応募する段階になって、2つの難問が現れた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏成長率、第1四半期は予想上回る伸び 景気後

ビジネス

インタビュー:29日のドル/円急落、為替介入した可

ワールド

ファタハとハマスが北京で会合、中国が仲介 和解への

ビジネス

ECB、インフレ鈍化続けば6月に利下げ開始を=スペ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中