最新記事

AI時代の英語学習

AIに「誤解」の余地を与えるな:機械翻訳で高品質な英文を作成する9つのヒント

2020年2月28日(金)12時05分
ニューズウィーク日本版編集部

Maica-iStock.

<グーグル翻訳など機械翻訳(自動翻訳)の便利さは魅力だけど、AIのミスに気付かなかったら怖い......。そう考えて二の足を踏む人も多いのでは? 和文英訳で質の高い英文を作成したいとき、翻訳の精度を高めるカギは「前」と「後」のひと手間。本誌「AI時代の英語学習」特集より>

1. 「プレエディット」を念入りに

おかしな英訳を回避するための最大のコツは、AIに「誤解」する余地を与えないこと。そのためには原文の日本語をAI仕様に調整する必要がある。「プレエディット」と呼ばれるこのプロセスによって、翻訳の精度は飛躍的に向上する。
20200303issue_cover200.jpg
機械翻訳の品質改善に詳しいヒューマンサイエンスの德田愛によれば、適切なプレエディットを行った場合は行わない場合と比べて、人間の翻訳と遜色ない、あるいは問題なく読める水準の英文が表示される割合が20%ほど高まったという。

2. 曖昧さを残さない

最も基本的なプレエディットは、主語や目的語など日本語で省略されがちな要素を書き足すこと。また、曖昧な係り受けにも注意が必要だ(「私は3年間の出向中に彼が転職したのを知った」は2通りに解釈できる)。

ほかにも代名詞の指すものを明確にする、性別や単数か複数かを明記する、二重否定(可能性がないわけではない)や部分否定(全ての項目が達成されたわけではない)、解釈の分かれる表現(製品Aは製品Bのようにバグがない)を避けるといった工夫も効果的だ。

3. 文を短く、簡潔に

「1つの文で伝える内容は1つだけ」の原則を厳守し、短く簡潔な原文を用意すること。マニュアル関連なら1文を20文字以内、メールや報告書でも40~50字以内に制限すると正しい英文が産出されやすいと、德田は指摘する。

また、原文を調整する際は、副詞節は1文中に1回、並列節は2回まで、といったルールを課すといいという。

4. 慣用表現にご用心

何げなく使っている慣用表現が思わぬ誤解を生むことも。例えば日本語では「難しい」「検討が必要」といった遠回しな表現で「できない」ことを伝えるが、これらに対応する「difficult」「need to be considered」には「大変だが何とかなる」というニュアンスが含まれる場合がある。

定型の挨拶表現も要注意だ。「高橋様におかれましては、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます」をグーグル翻訳にかけると、「Takahashi is grateful to you for your continued success.(高橋さんはあなたの継続的な成功に感謝している)」となってしまう。

英文メールでは冒頭や末尾の挨拶が不要の場合も多いので、日本語の常識を脇に置き、伝えるべきメッセージを明確にしよう。

【参考記事】new-style(新型)coronavirus, stay reki(渡航歴)...厚労省の新型ウイルス情報の英語がひどかった

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

欧州委、米の10%関税受け入れ報道を一蹴 現段階で

ワールド

G7、移民密輸対策で制裁検討 犯罪者標的=草案文書

ワールド

トランプ氏「ロシアのG7除外は誤り」、中国参加にも

ワールド

トランプ氏、イランに直ちに協議呼びかけ 「戦いに勝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中